第136回展 「モンスーンアジアの竹文化 ―素朴な技術(わざ)と造形の美―」


 アジアの東部から南部にかけて、モンスーンアジアと呼ばれる比較的湿潤な地域が広がっています。モンスーンアジアでは古くから稲作が発達し、多くの人口を養ってきた地域です。また、その風景に溶け込むかのようにして、いたるところに竹が植わっていることにも気づきます。モンスーンアジアに暮らす人びとと竹との関係は稲作文化と同様に深い絆があるといえるでしょう。今回はモンスーンアジアの人びとが竹をどのように利用しているかを紹介しながら、竹文化の多様性を学んでみたいと思います。

 

竹作りの寝台“竹眠牀(ティエクビンツン)” 中国台湾省台中市 清代後期

竹作りの寝台“竹眠牀(ティエクビンツン)” 中国台湾省台中市 清代後期

◆会期 :2009(平成21)年2月16日(月)~3月28日(土) 
◆開館時間:月~金 午前10時~午後6時/土・祝 午前10時~午後4時 
 ※閉館30分前までにご入館下さい。
◆休館日:毎週日曜日
◆入館料:無料 
◆会場:東京天理教館ビル9階 天理ギャラリー
◆主催:天理ギャラリー、天理大学附属天理参考館
◆後援:国立民族学博物館 協力:Loose Alliance展示研究会

 

◆イベント&ギャラリートーク

第1回 2009(平成21)年2月28日(土) 午後1時30分から
「竹を削る技:日本竹筬(たけおさ)の技術と伝承」(解説&実演)
日本竹筬技術保存研究会

第2回 2009(平成21)年3月27日(金) 午後1時30分から
シンポジウム「竹のある暮らし―大都会の真ん中で竹を語る―」
基調講演:柏木治次(富士竹類植物園事業本部長)
パネリスト:田口理恵(東海大学准教授)、小島摩文(鹿児島純心女子大学准教授)、清水郁郎(大同工業大学准教授)、吉田裕彦(天理参考館学芸員)
司会進行:久保正敏(国立民族学博物館教授)、木田歩(南山大学人類学博物館学芸員)

 

第3回 2009(平成21)年3月28日(土) 午後1時から
ワークショップ「竹の楽器を作り、演奏しよう」(竹胴の太鼓と竹笛を作ります)
定員:15名(事前の申し込みが必要、申込順)
材料費:2,300円
指導:中尾徳仁(天理参考館学芸員)、吉田裕彦(天理参考館学芸員)

各回、天理参考館学芸員による列品解説を同時開催します。

※各イベントの詳細は天理参考館(TEL0743-63-8414)までお問い合わせ下さい。

 

136book展示図録

サイズ/B5版、カラー32頁、モノクロ2頁
頒 価/600円

展示詳細

 「モンスーンアジア」、比較的雨が多く、湿潤なアジアの東から南にかけて広がる地域を指す気象地理用語である。モンスーンとは夏は海洋から大陸へ、冬は大陸から海洋へ吹く季節風のことをいう。毎年5月頃にインド洋の上空に発生した巨大な高気圧から、低気圧が発生してアジア大陸に向かって吹く暖められた大気の流れが夏(雨期)のモンスーン(季節風)である。
 夏のモンスーンは、ヒマラヤ山脈にぶつかると大きく東へ進路を変える。水蒸気を多く含んで重くなった空気の一部はヒマラヤ山脈にぶつかって分厚い雲を作り、アジア平野部の各地に大量の雨を降らせ、それまで乾季だったアジアの各地に雨期をもたらせる。
 モンスーンの影響を強く受ける範囲は、インドから東南アジア、中国南部、東アジア、太平洋沿岸まで大きく広がっている。この広い範囲がモンスーンアジアだが、南部は高温多雨な熱帯モンスーンに、ベトナム北部あたりから北は温暖な温帯モンスーンに分かれている。
 モンスーンアジアの各地では古くから稲作が発達し、多くの人口を養ってきた。また、その風景に溶け込むかのようにして、いたるところに竹が植わっていることにも気づかされる。モンスーンアジアに暮らす人びとと竹との関係は稲作文化と同様に深い絆で結ばれているといえるのかもしれない。
 今回の展覧では、広大なモンスーンアジアのうち、比較的竹がたくさん生い茂る東南アジアの島嶼部、大陸部東側、中国東部、台湾、日本を一つの範囲として、それぞれの地域の気候風土に根ざした人びとのライフスタイルに竹という自然素材がどのように取り入れられているかを考えてみることとした。
 モンスーンアジアの人びとの生活感性を再発見しようした場合、その気候風土に育まれた竹素材の活用状況や製作技術の継承方法を知ることは、大いに有用であり、これからの快適な暮らしのあり方を模索するヒントの一つになるかもしれない。

 

 

出品リスト

 

出品番号 資料名(日本語名称) 資料名(現地名称) 地域名
1.モンスーンアジアの竹と生態 
1. バリ島の竹 インドネシア、バリ島
2. 日本の竹 日本、奈良県

3.モンスーンアジア各地の竹を使う文化・暮らし 
3-a 素材・技術の活用
<1>竹竿
3. 横笛 柳笛 中国、広州
4. 竹煙管 台湾、東部平地
<2>竹節 
5. びんろう嗜好用の石灰容器 インドネシア、スンバ島 
6. 竹筒の暦 ポルハラアン インドネシア、スマトラ島
7. 竹筒の容器 マレーシア、サラワク州
<3>竹管
8. 竪笛 スリン インドネシア、バリ島
<4>割竹
9. 竹火箸 インドネシア、バリ島
10. 背負い具 ラオス、ヴィエンチャン県
<5>へぎ
11. 提げかご 中国
12. 飯かご ティップカオ ラオス、ヴィエンチャン県
<6>竹片
13. 5枚板の打楽器 台湾、東部平地
14. 口琴 台湾
15. 貝葉文書の閉じ板 インドネシア、バリ島
<7>竹ひご
16. 虫かご 中国
17. 凧 インドネシア、ジャワ島
<8>竹笹
パネル展示
<9>竹紙
18. 額につける竹紙製の雑面 タイ北西部
3-b 人・生き物が入る
19. 竹作りの寝台 竹眠牀(ティェクビンツン) 台湾、台中
20. 竹椅子 乳母椅 台湾、高雄
21. コオロギ相撲のリング 蟋蟀闘籠(シエクスツトウロン) 中国、北京
22. 虫かご 中国、北京
23. 御殿形の虫かご 中国、北京
24. 闘鶏用の鶏かご インドネシア、バリ島
25. 飼育用のアヒルかご 中国、福建省
26. 小鳥かご サンカル インドネシア、バリ島
27. 魚籠 ラオス、ヴィエンチャン県
28. 魚籠 台湾、東部平地
29. 魚伏せかご カンボジア
30. ちりとり形の魚受け具 中国、福建省
3-c 物を入れる
31. 手炉 中国
32. 丸口かご フィリピン
33. ポット保温具 中国
34. びんろう嗜好用の石灰容器 インドネシア、スマトラ島
35. ざる タイ
36. 蓋つきの提げかご 中国
37. 飯かご ティップカオ ラオス、ヴィエンチャン
38. 手提げかご 中国
39. 竹節の水筒 インドネシア、スマトラ島
40. 竹管の酒筒盒 インドネシア、スラウェシ島
41. 竹筒容器 台湾
42. 竹筒の水筒 インドネシア、マドゥラ島
43. 飯かご ティップカオ ラオス、ヴィエンチャン
3-d 身に着ける
44. 竹管つなぎの肌着 台湾北部地方
45. 亀甲形の蓑 台湾、中西部平地
46. 笠 インドネシア、バリ島
47. 笠 ラオス、ヴィエンチャン県
48. 笠 中国
49. 笠 中国
3-e 使う
<1>竹製の楽器(音を鳴らすもの)
50. 笙 ケーン タイ東北部
51. 竪笛 スリン インドネシア、バリ島
52. 竪笛 スリン インドネシア、バリ島
53. 竪笛 スリン インドネシア、バリ島
54. 竪笛 洞簫(ドンシャオ) 中国
55. 横笛 中国
56. 五枚板の打楽器 台湾
57. 飼い鳩の呼び笛 中国、北京
58. 竹筒排琴 リンディック インドネシア、バリ島
59. 竹排琴 ラナート・エク タイ、チェンマイ
60. 牛鐸(カウベル) カンボジア
61. スズメ脅し ピンジャンカン インドネシア、バリ島
62. 揺竹楽器 アンクルン インドネシア、ジャワ島
63. 口琴 台湾
64 . 一弦弓琴 台湾、東部平地
65. 呼び子竹 インドネシア、ジャワ島
66. バンブー風鈴 ディンドン・バンブー インドネシア、バリ島
67. 二胡 提琴 中国
68. 竹筒琴 インドネシア、スラウェシ島
<2>日常の道具
69. 竹の家具を配した宴席 台湾
70. 竹煙管 台湾、台南地方
71. 竹煙管 台湾
72. 竹煙管 中国
73. 竹煙管 コンツォイ 台湾、南部地方
74. 竹煙管 台湾、東部平地
75. 竹竿の水煙管 中国、香港
76. 竹たわし 中国、福建省
77. 竹枕 中国
78. 凧 インドネシア、ジャワ島
79. 凧 タイ、チェンマイ
80. 凧 マレーシア
81. 弩 タイ西北部
82. 吹き矢と吹き矢筒 インドネシア、スラウェシ島
83. 短剣につく竹節の根付 台湾、南部地方
84. 紡錘 ススヌルン 台湾、蘭嶼
85. 火あぶりうちわ インドネシア、バリ島
86. 竹筬 日本、岐阜県
<3>非日常の道具 
87. 三段重ねの提げかご 台湾
88. 鉢形のかご タイ西北部
89. 竹筒の暦 ポルハラアン インドネシア、スマトラ島
90. 竹紙の十二神將図符 タイ西北部
91. 額につける雑面 タイ西北部
92. 貝葉文書の閉じ板 インドネシア、バリ島
93. 松明 日本、奈良県
<4>その他 
94. 油絵「竹林の青竹」 インドネシア、バリ島
95. 竹細工の郷土玩具9点 日本、和歌山県

4.竹への回帰
96. ガムラン楽器 カンティル インドネシア、バリ島

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