特別展・企画展

第66回企画展 「鉄道絵葉書の世界」


 現代ではインターネットが普及し、電子メールや各種コミュニケーションツールの発達により、早く便利な情報のやりとりが可能となりましたが、手紙や葉書にはそれらには代えられない質感があります。そして美しい風景やモノを印刷した絵葉書には、今なお格別の趣きがあり、美的所有欲を満たすものも少なくありません。
 近代日本の郵便制度は、鉄道と同様に明治初めにイギリスより導入され、それまでの飛脚に取って代わりました。その後、明治30年代に絵葉書の制作・使用が認められ、万国郵便連合加盟25年記念絵葉書や日露戦争の記念絵葉書発行を契機として、一大ブームが起こり絵葉書を収集対象とするコレクターも増えました。
 今回展示する資料は、主に鉄道会社等が制作したものや交通にまつわる図柄を扱った、明治から昭和初期の絵葉書で、沿線各地の名所旧跡や年中行事、路線開業の記念等様々な題材が、モノクロ・カラーや手彩色の写真・イラストで様々な印刷方法により印刷されています。
 しばし小さな絵葉書に詰め込まれた美しい世界に浸り、懐かしい鉄道車輌や全国各地の名所旧跡、観光地をめぐる旅に出てみてはいかがでしょうか。

◆会期:2012(平成24)年7月4日(水)~8月12日(日)
◆会場:天理参考館 3階 企画展示室1・2
◆後援:奈良県天理市、奈良県教育委員会、天理市教育委員会、株式会社近畿日本鉄道、共同通信社

 

チラシ

企画展開催を記念して絵葉書を発行しました。1枚30円

デボ150形151号電車(大阪電気軌道 橿原神宮前駅 昭和15年)

デボ150形151号電車(大阪電気軌道 橿原神宮前駅 昭和15年)

キド2 ガソリンカー(大阪電気軌道 法隆寺線平端駅 昭和15年)

キド2 ガソリンカー(大阪電気軌道 法隆寺線平端駅 昭和15年)

デハボ1000形1017号電車(奈良電気鉄道 橿原神宮前駅 昭和5年)

デハボ1000形1017号電車(奈良電気鉄道 橿原神宮前駅 昭和5年)

51形53号電車(信貴生駒電鉄 信貴山下駅 昭和14年)

51形53号電車(信貴生駒電鉄 信貴山下駅 昭和14年)

 

 

展示詳細

【絵葉書のはじまり】
 個人的に交換するカードとしては、世界初の国際博覧会を企画運営したイギリス人ヘンリー・コールが、1843年にクリスマスカードの原型のようなものを作成したといわれている。その後、官製葉書は1870年こごろにヨーロッパ各国に順次導入され、当時勃発した普仏(ふふつ)戦争に関連する図柄を印刷し、使用したのが絵葉書の最初といわれている。
 日本では、明治4(1871)年より前島密の尽力で郵便制度が始まり、同6(1873)年には通常の官製葉書が発行された。当初の官製葉書は内側に通信文を書く形式であった。日本が鉄道を導入したのはイギリスに約50年遅れてのことであったが、官製葉書は欧米の採用からわずか数年で導入したことになる。しかし、私製葉書が認められるのは遅く、同33(1900)年のことであった。逓信省が同35(1902)年に万国郵便連合加盟25周年を記念して発行したものが、日本最初の官製絵葉書で、6種類1組5銭で大変好評であったという。そして同37~38(1904~1905)年日露戦争の際に作成された戦役記念絵葉書が呼び水となり、空前の絵葉書ブームが到来した。
 絵葉書は、その時々の社会的な出来事やイベントを伝えたり、伝統的な風俗習慣や風光明媚な名所・美人画などを観賞するため、また時節の挨拶のために製作され、鉄道など最先端の産業技術も題材とされた。

【彩られた絵葉書-手彩色】
 現在ではデジタルカメラや携帯電話付属のカメラが普及し、誰でもどこでもいつでも気軽に簡単に写真を撮ることができるが、明治から昭和はじめにかけてカメラはまだまだ普及途上で、撮影のためのガラス乾板や紙焼き写真は大変高価で貴重なものであった。そうした点で写真が刷られた絵葉書は、庶民が気軽に入手できる「写真」であった。
 絵葉書が盛んに作成されるようになった明治30年代の日本には、手軽で安価にカラー印刷する技術はまだなく、コロタイプ印刷されたモノクロの写真に、主に内職の女性が筆で一枚一枚色を塗る「手彩色」を施された絵葉書が重宝された。これは手間と根気のいる作業で、手慣れた職人でも彩色するのは一日に数百枚程度であった。
 当時の写真撮影技術で人物や車両など対象物を鮮明に撮るには露光時間を長くする必要があり、コントラストの関係で空など明るい部分が白とびを起こし、雲などが写らずのっぺりと平板になることが多い。そういった空にも、想像でグラデーションの着色がなされた。着色される色数も多くなく、分業体制で見本に従って作業を行っていたようだが、同じ写真でも業者によって配色が異なり(厳密に言うと同じ業者でも一枚一枚微妙に異なる)、限られた色数をいかに配色するかで、対象物にどのようなイメージを持っていたのかが分かり大変興味深い。

【鉄道絵葉書】
 制作された多種多様な絵葉書の中でも、鉄道は大変人気のある題材として重宝された。現在でも、鉄道ファンや絵葉書収集家にとって重要な収集の一ジャンルである。最先端の乗物であり、また経済活動の象徴である鉄道の様々な車両は言うに及ばず、付帯施設である駅舎や市電が走る町並みからは当時の風俗も垣間見ることができ、それは時代を映す鏡でもあったといえよう。全国各地を力強く駆けぬける蒸気機関車の姿は、人の心を掴んで離さない。

 

 

関連イベント

鉄道模型走行実演

月日:2012(平成24)年7月14日(土)、27日(金)、30日(月)、8月1日(水)、3日(金)、11日(土)
時間:午前10時から、午後2時30分から 約30分間
場所:当館3階企画展示室

 

第216回トーク・サンコーカン 「絵葉書に見る鉄道・観光のイメージ」

日時:2012(平成24)年7月21日(土) 午後1時30分から
講師:乾 誠二 当館学芸員
場所:当館研修室
定員:100名
受講料:入館料のみで受講できます

 

列品解説

日時:2012(平成24)年7月26日(木) 午後1時30分から
場所:当館3階企画展示室

 

電車絵葉書(明治43年 箕面有馬電気鉄道)

電車絵葉書(明治43年 箕面有馬電気鉄道)

富士山絵葉書(明治40~大正6年 鉄道院)

富士山絵葉書(明治40~大正6年 鉄道院)

 


 

出品リスト

 

番号 資料名 印刷・発行所 年代
1. 万国郵便連合加盟二十五年祝典紀念 山陽道汽車進行中ノ郵便物受授機械 逓信省 印刷局 明治35(1902)年
2. 箕面有馬電気軌道 明治43(1910)年
3. 大阪市電 花電車 ろ
4. 外国人向け観光絵葉書 鉄道院 Tokio Printing Co. ろ
5. 蒸気機関車687号 TONBOYA ろ
6. 蒸気機関車6709号 SEIKAIDO は
7. 「創立二十年記念絵葉書」より 現在ノ機関車及客車 島原鉄道(長崎) 昭和3(1928)年
8. 「原色版機関車No.1」 SEIKAIDO は
9. 伊予宇和島 窓峠隧道北面 大野書店 ろ
10. 須磨一ノ谷海浜 楠正堂 は
11. 「鉄道五十年祝典記念絵葉書」より 特別急行列車 帝国鉄道協会 日本美術写真印刷所 大正10(1921)年10月14日
12. 熱海ステーション 敷島屋 ろ
13. 伊予三津街道ヨリ汽車進行遠望 神泉堂 は
14. 鉄道五千哩祝賀会記念 名古屋 汽笛一声 明治39(1906)年5月20日
15. 北海道登別温泉場 進行中専用列車 は
16. 蒸気機関車8864号 ろ
17. 舞子公園(其一) 神戸日東館 ろ
18. 蒸気機関車6783号 ろ
19. 「津軽海峡の女王 青函連絡船」より 函館連絡桟橋の可動橋 TAISHO(和歌山) は
20. 須磨名所 須磨一の谷戦ノ浜 ろ
21. 山陰西線余部鉄橋 ろ
22. 京都七条停車場 ろ
23. 京都四条大橋 ろ
24. 名古屋名所 栄町通 ろ
25. 金沢市街 駅前 は
26. 金沢兼六公園ヨリ見タル石川門 金沢城 橋本(金沢) は
27. 金沢市街 武蔵ヶ辻通り 小川千新堂 は
28. 函館 商業の中心 函館十字街の殷賑 TAISHO(和歌山) は
29. 熊本百景 熊本駅前の景 浜田印刷(熊本西通町) は
30. 和歌山名勝 京橋 は
31. 別府名所 仏崎鶴ノ松 和田 ろ
32. 箱根名所 登山電車前進後退して急勾配を上下する出山信号所付近 TAISHO(和歌山) は
33. 讃岐 新川鉄橋及源平古戦場屋島山ヲ望ム 高松岡田屋書店工場 ろ
34. 三井神岡鉱業所 栃洞坑通洞坑内電車 斐太中央印刷所・住伊書店 は
35. 「開通記念」より 須坂停車場 長野電気鉄道 大正15(1926)年6月
36. 加賀 粟津温泉 電車停留所 銀花堂(東京市日本橋若松町) ろ
37. 「御陵線開通記念絵葉書」より 特別ボギー車 松平写真館(新宿三丁目) は
38. 「電化記念」より 定山渓鉄道株式会社 電車 定山渓鉄道 昭和4(1929)年10月
39. 阪急神戸駅付近高架線 は
40. 「三井寺線開通記念絵葉書」より 三井寺停留場 大津電車軌道 ろ
41. 「武蔵野沿線絵はがき」より 武蔵野鉄道山口線沿道 武蔵野鉄道 鉄道交通社 は
42. 「東京地下鉄道 上野浅草間開通」より 東京地下鉄道 車体全景 青海堂(日本橋) 昭和2(1927)年12月30日
43. 「快速大型車新造記念」より 3011型電車 阪神電気鉄道 藤井改進堂 昭和29(1954)年 
44. 「地下鉄開通11月15日」より 名古屋市地下鉄栄町駅地下ホーム 名古屋市交通局 昭和32(1958)年11月15日
45. 「水鉄絵はがき」より 交直両用電車、電気機関車群(勝田電車区) 水戸鉄道管理局 富士オフセット印刷 昭和38(1963)年
46. 碓氷嶺電気機関車 丸山付近進行の景 ろ
47. 碓氷峠電気機関車進行の景 SEIKWADO(東京神田橋) ろ
48. 碓氷線アプト式電気機関車 ろ
49. 「強羅-早雲山間ケーブルカー」より 新しく出現の日本一の強羅ケーブルカー 箱根登山鉄道 和25(1950)年7月1日
50. 「六甲山」より六甲ケーブル展望車 六甲ケーブル ほ
51. 「省営自動車紀南線開通記念」より 昔の旅も偲ばるる安全索道 大阪鉄道局 ジーチーサン商会(大阪北浜) 昭和11(1936)年10月
52. 「朝熊岳ケーブル電車及名所」 は
53. 鉄道作業局 鉄道作業局 明治38(1905)年
54. 「汽車の旅」より 食堂車 鉄道省 日本食堂車協会 昭和8(1933)年11月30日
55. 「丹那トンネル開通記念絵葉書」より 食堂車 日本食堂車協会 日本光沢写真(東京萬世橋) 昭和9(1934)年12月
56. 特別特急列車「あじあ」 南満洲鉄道 は
57. 「ビジネス特急(こだま号)完成記念」 川崎車輌・近畿車輌・汽車製造(日本国有鉄道納)  昭和33(1958)年9月
58. 食堂車関連資料 日本食堂 昭和31(1956)年
59. 食堂車関連資料 日本食堂 昭和34(1959)年
60. 東京名所 上野停車場 は
61. 室蘭 道南第一の玄関口室蘭停車場 に
62. 青森名所 青森停車場 は
63. 東京駅建築概要 ろ
64. 東京駅 は
65. 東京名所 萬世橋停車場 は
66. 「更新の京浜電鉄」より 京浜湘南電鉄 沿線案内図 京浜電気鉄道 日清色刷 昭和8(1933)年
67. 越後鉄道 本社並白山停車場 AOKI PRINTING CO.(新潟) は
68. 蒲原鉄道延長線開通記念 AOKI PRINTING CO.(新潟) は
69. 富山停車場 高木廣盛堂 ろ
70. 豊橋名所 豊橋停車場並ニ吉田駅 は
71. 「新名古屋竣工記念」より 新名古屋駅全景 名古屋鉄道局 菊花堂 昭和12(1937)年2月
72. 伊勢山田停車場前 は
73. 大阪梅田終点 阪神電気鉄道 亀井天然色写真工藝社 ろ
74. 明治二十二年頃ノ神戸駅 織田写真館 は
75. 伊予高浜港及停車場 神泉堂 は
76. 徳島県 小松島十二景之内 汽車汽船之連絡地点 小山助学館(徳島市西新町) は
77. 浜田停車場構内 三浦書肆 SEIUNDO PRINTING CO.LTD., 昭和5(1930)年
78. 尾道 停車場構内 は
79. 小倉市 小倉駅プラットホームの景 ろ
80. 別府温泉名勝 別府停車場 別府港外 は
81. 東京電車線路地図 生文館(東京) ろ
82. 和歌之浦 和楽路屋日下伊兵衛 ろ
83. 名古屋市電車案内 大正10(1921)年
84. 大阪電気軌道グループ路線図 に
85. 鳳来寺鉄道・豊川鉄道・田口鉄道路線図 は
86. 近江鉄道沿線図 凸版印刷 は
87. 大湯鉄道沿線略図 嶽本の温池 由布川の水源 ろ
88. 九州線路案内図 門司鉄道局 大正15(1926)年9月
89. 「羽幌線全通記念絵葉書」 鉄道省北海道建設事務所 昭和7(1932)年9月
90. 「山田線陸中川井宮古間鉄道 開通記念絵葉書」 鉄道省盛岡建設事務所 昭和9(1934)年11月6日
91. 「小湊鉄道開通記念絵葉書」 TOKYO DESIGN PRINTING(東京神田) 大正14(1925)年3月7日
92. 「市街線東京上野間 線路開通記念絵葉書」 鉄道省 大正14(1925)年11月1日
93. 「武州鉄道開通記念」 岩槻子供会 大正13(1924)年10月19日
94. 「羽越線全通記念絵葉書」 鉄道省長岡・秋田・新庄建築事務所 片岡穣(東京) 大正13(1924)年7月
95. 「能登線鵜川 宇出津間開通記念」 日本国有鉄道 西濃印刷(岐阜) 昭和35(1960)年4月17日
96. 「丹那隧道開通記念絵葉書」 東京鉄道局 日本光沢写真合名会社(東京万世橋) 昭和9(1934)年12月1日
97. 「電車開通記念絵はかき」 有松町 NAKAMURA PHOTO STUDIO 大正6(1917)年5月8日
98. 「岡多線開業記念」 名古屋鉄道局 昭和5(1930)年12月20日
99. 「伊勢電鉄 山田線開通記念」 伊勢電気鉄道 名古屋秀英社 昭和5(1930)年12月25日
100. 「紀勢線和歌山箕島間開通記念絵葉書」 鉄道省岐阜建設事務所 西濃印刷 大正13(1924)年2月
101. 「作備線鉄道全通記念絵葉書」 鉄道省岡山建設事務所 片岡穣(東京)、日本光沢写真合名会社(東京万世橋) 昭和4(1929)年4月
102. 「岩徳線全通記念絵葉書」 鉄道省 片岡写真工芸社(東京) 昭和9(1934)年12月1日
103. 「高知線全通記念絵葉書」 鉄道省 光村印刷(神戸)  大正14(1925)年12月5日
104. 「佐賀線全通記念絵葉書」 鉄道省熊本建設事務所 片岡写真工芸社(東京) 昭和10(1935)年5月25日
105. 「FOR REMEMBRANCE SCENES IN UNIQUE JAPAN」 鉄道省 は
106. 外国人向け観光絵葉書 THE GOVERNMENT RAILWAYS’ KOBE REGIONAL OFFICE ABE(東京)
107. 外国人向け観光絵葉書 鉄道省・国際観光局 に
108. 「Hokkaido」 国際観光局 昭和11(1936)年9月
108 B. 「北海道の風光」 札幌鉄道局 に
109. 大阪市営電気鉄道 明治41(1908)年8月
110. 南海鉄道 明治40(1907)年8月
111. 阪神電気鉄道 明治39~大正1(1906~1912)年
112. 阪神電気鉄道 明治39~大正3(1906~1914)年
113. 箕面有馬電気軌道 明治43(1910)年
114. 京阪電気鉄道 明治43(1910)年
115. 大阪電気軌道 大正5(1916)年
116. 「阿蘇と雲仙 その一」 門司鉄道局 は
117. 「名鉄瀬戸線〝栄町〟乗入記念」  鉄道友の会 名古屋支部 昭和53(1978)年8月20日
118. 「旅の心得帖」 広島鉄道局 ほ
119. 「瀬戸内海之風光」 広島鉄道局
120. 富直鉄道親不知のトンネル 広盛堂(富山西町) ろ
121. 保津川絶勝 鵜飼及急流の引舟 は
122. 新幹線関連記念絵葉書 日本国有鉄道 晃和・凸版印刷 昭和42~59(1967~1984)年
123. 暑中見舞・年賀状 山本不二男 昭和8~40(1933~1965)年

合計 124件 272点(うち絵葉書227点) 

○出品資料はすべて天理大学附属天理参考館の収蔵品である 
○発行年代が明確でないものは宛名面の様式から、い・ろ・は・に・ほと分類した 
い:明治33年~39年・・・・・通信欄無し
ろ:明治40年~大正6年・・宛名面の1/3が通信欄
は:大正7年~昭和7年・・宛名面の1/2が通信欄
に:昭和8年~19年・・・「きかは便郵」→「きがは便郵」 
ほ:昭和20年~・・・・・・「きがは便郵」→「郵便はがき」

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