ブログ布留川のほとりから

初公開の土偶!

2017年12月21日 (木)

1月5日から始まる2018年新春展「はれの日の装い 装身具の歴史」は、出展資料の出土地が広い範囲に及ぶことは前回お知らせしましたが、時代も縄文時代から江戸時代と長い期間にわたり、日本に6例しかない土の面や、関西では目にする機会の少ない関東地方の埴輪、三角縁神獣鏡に柄鏡と、多彩です。単館の所蔵品でこれだけ網羅できることは、天理参考館の真骨頂だと感じつつ、作業を進めています。
出展資料から、初公開の小さな土偶をご紹介したいと思います。茨城県石神下貝塚から出土した土偶です。石神下貝塚は霞ヶ浦の西側に位置します。詳細は知られていませんが、霞ヶ浦周辺は貝塚が多数存在する地域です。

 

      石神下貝塚の土偶

         背面

 

          後頭部

この土偶は高さ7.8㎝、壊れて手足がなくなって出土することが多い土偶としては珍しく、一見無傷で残っているように見えます。今回は装身具の展覧会なので、この土偶の姿形を観察してみると、小さいのに見どころが多いのです。まず頭は、中央でV字に開き、その両側は山形に盛り上がった左右対称形です。髪の生え際と髪の毛のような線が引いてあります。後頭部には左右に角のような突起があり、そこにも線が引いてあります。髪を結っているのか、何かをかぶっているのでしょうか。

 

髪と顔はほんのり赤く塗られています。お化粧を表すのかもしれません。目と口は、尖った工具で突いて開けた小さな穴で、よく見ると周囲に放射状に広がる線が描いてあります。これもお化粧なのか、特に意味はないのか、わかりません。そして左目の横には、後頭部と同じような突起があります。右目の方は割れてなくなっています。こちらは髪を結っているとは考えにくい位置なので、謎の突起です。

首の造形はなく、小さな手がついています。下半身にはパンツをはいているような線刻があり、その中央はおへそのように突出しています。パンツは背面にも描かれています。同様の線刻がある土偶は数多いので、この形の衣服が縄文時代にあったと考えてよいのでしょう。
小さいですがいろいろな情報を与えてくれる土偶です。イラストにしました。展示室では実物の土偶とイラストが皆様をお迎えいたします。寒い日が続き、出かけるのは億劫になりますが、今度いつ展示できるかわからない資料を多数展示していますので、どうぞお越し下さい。

 

【2018年新春展ブログ2】

考古美術室 F 

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