天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化笹野彫(ささのぼり)

sasanobori

sasanobori

鶏(左2体) 全高9.0cm、全高6.3cm
笠かむり農婦 全高13.0cm
蘇民将来 全高6.2cm
お鷹ぽっぽ(右2体) 全高21.0cm、全高13.0cm

地域:山形県
資料番号:20441、20442、20438、20439、20440、20882

展示中 1-0

東北地方は豊かな森林資源に恵まれているため、木を素材にした木地玩具の種類が豊富です。丸いフォルムで優しく柔らかな雰囲気のこけしと対極をなすのが山形県米沢の郷土玩具、笹野彫です。その代表的なモチーフである「お鷹ぽっぽ」はシャープで凛とした佇まいをしています。
笹野彫は、米沢にある笹野千手観音の縁日(1月17日)に売り出される縁起物であるため、この名があります。サワグルミなどの白肌の木の丸棒をサルキリという山刀とチヂレと呼ぶ細工刀を使って丁寧に削り上げ彩色したものです。江戸時代安永年間(1772~1781)に藩の財政を立て直し、名君の呼び名が高い米沢藩主上杉治憲(はるのり、鷹山:ようざん)が、領内の産業奨励策として農民の副業に作らせたのが始まりと伝わっています。治憲は九州の日向高鍋藩から10歳で米沢藩に養子に入りました。現在の宮崎県にも古くから鶉車(うずらぐるま)などの木地玩具があり、これを参考にしたのかもしれません。鶉車は、タラの丸木をナタで三角形に切り落としたものに2個の車を付け、赤黒で彩色した素朴な玩具です。ゴツゴツした木肌で野趣あふれる鶉と違って、なめらかな白肌の木地に鋭利にまっすぐ伸びた尾を後ろに流す「お鷹ぽっぽ」は繊細でシャープです。上杉謙信以来の名家の誇りゆえに改革が進まなかった米沢藩の財政を立て直し、東北一帯を襲った天明の大飢饉を乗り切った鷹山を象徴するに相応しいと言えるでしょう。「お鷹ぽっぽ」のほか、「蘇民将来(そみんしょうらい)」(疫病除け)、「餅つき兎」(勤労)、「恵比寿大黒」(福徳円満)、「鶴亀」(長寿)、「鶏」(早起き)、「笠かむり農婦」(早起き)、「鶺鴒(せきれい)」(子孫繁栄)など、それぞれ縁起に因み、次のような歌に詠まれています。
“勤倹、勤勉を「鶏」の如く早起きし「笠かむり農婦」の如く簑笠をつけて「餅つき兎」の如く働けば「お鷹ぽっぽ」の如く禄高を増し「恵比寿大黒」にあやかって家内は福徳円満となり「蘇民将来」の如く無病息災で「鶴亀」の如く長寿を保ち「鶺鴒」の如く子孫繁栄するであろう”