天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化十字架装飾付き耳かきのネックレス(じゅうじかそうしょくつきみみかきのネックレス)

エチオピア 20世紀後半
長43.5cm 銀
資料番号:89-1295

展示中 1-0

良質なコーヒー豆の産地として、またマラソンの強豪国として知られるエチオピアは、アフリカ大陸にあって異色の歴史と文化を持つ国です。4世紀にキリスト教が伝えられると、驚くべきことにローマ帝国よりも早く国教と定めています。その後、周囲を異教徒に囲まれながらも、教えを守り続け、現在も国民の半数以上がキリスト教を信仰していると言われています。
掲出はエチオピアのキリスト教徒が身に着ける耳かきのネックレスです。ネックレスに耳かきを提げること自体も不思議な組み合わせですが、十字架の装飾が耳かきと直結していることも奇妙に見えるかも知れません。言うなれば、キリスト教徒にとって聖なるものの象徴である十字架と、世俗的な行為である耳掃除の道具が同居していることへの違和感です。
こうした疑問は次のような説明によって氷解していきます。耳を掃除している間、人は外敵から無防備な瞬間にあると言えます。その隙を狙って体内に入ろうとする邪悪な存在を退けるため、人々は耳かきに十字架を添えるアイディアを生み出しました。つまり、十字架は単なる装飾ではなく、身を護るために欠くことの出来ない信仰上のシンボルなのです。さらに、耳を常に清浄にしておくことは、教会で神の教えを聞きもらさないために大切な身だしなみと考えることもできます。このように、耳かきをネックレスにして日頃から身に着けるということは、信仰が人々の日常の中に浸透していることを示す一例と言えるでしょう。