天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化稲の母への奉納人形“チリー”(いねのははへのほうのうにんぎょう“チリー”)


インドネシア バリ島
20世紀前半
高35.0cm ロンタル椰子の葉


インドネシア ロンボク島
20世紀前半
高19.0cm 陶製
資料番号:07572(右)、79-359(左)

展示中 1-0

左は陶製で、右はロンタル椰子の葉を編んで作られています。そして右の顔は、刺繍のように木綿糸で縫い取ることで表現されています。双方とも、収穫期に穀倉にいるデウィ・スリに供物として捧げられる奉納人形のチリーです。これらチリーの働きによって、多くのコメが穀倉に運び込まれると信じられています。
インドネシアでは、デウィ・スリは、稲に宿る精霊である「稲の母」になぞらえらえて、稲の女神として崇められています。これは稲に霊魂や精霊が宿り、それにより稲が生かされているという稲魂信仰で、インドネシアに限らず、東南アジアの稲作地域全般で認められます。土着の精霊崇拝でもあり、稲の霊魂や精霊が、人間と同様に誕生(発芽)、成長、成熟、死(枯死)、再生の過程を繰り返すとの観念に基づいたものです。なおデウィ・スリは、ヒンドゥー教で美、愛、豊穣、幸運の女神とされるラクシュミーに見立てられています。このデウィ・スリについては、西ジャワに次のような作物起源神話が残されています。
彼女は生まれたばかりのころに大神に引き取られ、その妻である女神ウマによって育てられました。その後大神は、美しく成長したデウィ・スリとの結婚を望むようになります。しかし、タブーを犯し災いが起こることを懸念した神々に殺され、土の中に埋められてしまいました。しばらくすると、その場所からココヤシ、稲、サトウヤシなどが生えてきました。そして大神は、これらの作物を大切に育てるように西ジャワの王に命じました。
この神話については、「古事記」のオオゲツヒメや「日本書紀」のウケモチにまつわる神話との類似性が指摘されています。地域は違えども、稲作文化には共通する観念があるのかもしれません。