天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術ティリンス宮殿の壁画 牛の背で踊る男の図(ティリンスきゅうでんのへきが うしのせでおどるおとこのず)

ティリンス宮殿の壁画 牛の背で踊る男の図

ティリンス宮殿の壁画 牛の背で踊る男の図

1884-85年 33.9cm×49.0cm
資料番号:

展示中 1-0

ティリンス遺跡はギリシア、ペロポネソス半島のアルゴリス湾東岸にあるアクロポリス遺跡で、岩の丘の上に建造されています。シュリーマンが助手のデルプフェルトを引き連れて発掘したのは1884年のことです。当時も発掘を進めながら遺構や遺物を記録しています。もちろん現在のような実測の技術はありませんが、画家を呼んで描かせていました。
本例もその1つで、宮殿(前14-13世紀)から出土した壁画断片を描いたものです。原画の下にある鉛筆書きはシュリーマンによるものです。
この壁画は明らかに、クノッソスの闘牛士壁画でよく知られているミノアの先行例を模しています。クノッソス例のように、ティリンス例も青地に描かれて、赤の垂直線が横断する白の帯飾りによって囲まれています。跳んでいる曲芸師と牛は白で描かれています。人物の片足が牛の尻尾の上に描かれていることから、人物は後で描かれたと判断できます。人物の白色顔料は胴部のようにところどころはげ落ちて、下地の青がむきだしています。その人物は牛の角をつかんで、体は牛とほぼ平行状態にあります。こうした図像は「浮かぶ曲芸師」と呼ばれています。