天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術白陶加彩武人俑(はくとうかさいぶじんよう)

中国 唐(7世紀後半~8世紀初頭)
高75.1cm 陶器
資料番号:中1160

展示中 1-0

甲冑を身につけて兜鍪(とうぼう)を頭にかぶった猛々しい武人俑(ぶじんよう)です。素焼きの陶製で、表面には白化粧を施した上で岩絵具(いわえのぐ)を用いた彩色が描かれています。甲冑は造形・彩色ともに細やかに表されており、写実的な表現といって良いでしょう。背部分には現在も比較的良好な状態の彩色が残されており、制作当時の華やかな姿を今に伝えています。
この武人俑は、墳墓の守護者として副葬された鎮墓像で、墓主の死後の世界での安寧を護る大切な役割を担っていました。左手の掌を胸前に突き出し、右手は腰前で握りしめ、両足は肩幅に開き腰をぐっとひねって力を込めています。全身の筋を引き締めたような緊張感を感じさせる造形で、眉間に力を込めて前をきっと見据える表情と併せて、墳墓に侵入する外敵を威嚇するのに十分な表現といえるでしょう。肩甲の獣頭も恐ろしげな風貌を見せ、これそのものが魔除けの怪獣のようにも見えます。
陝西省長武県張臣合墓(668 年)から大きさ・造形ともによく近似する作例が出土しており、ほぼ同時期かやや下る7世紀後半~ 8世紀初頭の作品であると考えて良いでしょう。また、同墓では武官俑と一対で用いられており、掲出の武人俑も同様であったと考えられます。