ブログ布留川のほとりから

マジョリカ陶器とその使い方

2020年11月19日 (木)

ルネサンスのやきものを代表するのが、イタリアで作られたマジョリカ陶器です。実はこれはイスラーム陶器の技術を継承し、その影響を強く受けて発展したものです。イスラームから多くを学んだルネサンスを物語っていると言えましょう。そのマジョリカ陶器の中でも最高級品と言えるのが「物語画風(イストリアート)」と呼ばれる彩画陶器です。ルネサンスらしくギリシア神話や歴史、聖書のシーンが遠近法を用いて鮮やかに彩色されているのが特徴です。

写真の陶器はその1つで、開催中の創立90周年特別展「大航海時代へ―マルコ・ポーロが開いた世界―」に出品しています。アレクサンドロス大王が東方遠征する途中でトロイア遺跡に立ち寄りアキレウスの墓を参ったというエピソードを題材としています。アレクサンドロスは自らをヘラクレスとアキレウスの子孫と称していました。

さてこれら物語画風のマジョリカ陶器は、その見事な彩画と使用痕であるフォークやナイフによる傷がないことから、装飾を目的とした飾り物と解されています。しかし実際に使ったのではないかとする説もあります。頻度が少なく丁寧に使えば傷も付かないので、貴族が邸宅に客を招くときに出されたはずだと。カチカチと音なんか立てないのでしょうね。食事をするときにその食材や料理の仕方、味などを話するのが楽しみです。さて平らげたお皿は文字通りの空白ではなく、そこに色鮮やかな彩画あればまたその話にもなります。しかもそこに描かれたシーンがギリシア神話であったり、古代のエピソードだったりすれば・・・「この話知っていますことよ」「あら、よくご存知で」ふふっ、とか言って教養があることをお互い褒め合ったのではないでしょうか。ということで私は実際に使った派です。

 

【特別展大航海時代へブログ5】

考古美術室 T 

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