ブログ布留川のほとりから

ホメロスの世界(2)

2015年03月05日 (木)

「世界で一番美しい方へ」と書かれた黄金のリンゴ

ある結婚式が行われたとき、エリスという不和・不仲の女神だけが、その祝 宴の場に呼ばれませんでした。不和・不仲の神様なので呼ばれないのも当然と 言えば当然なのですが。しかしエリス本人は怒って、黄金のリンゴを、祝宴の 席に投げ入れました。そこには、「世界で一番美しい方へ」と書かれていまし た。そうなると、その場にいた女神たちは、自分こそがそれに相応しいと騒ぎ出します。

なかでも、ヘラ(ゼウスの妻)、アテナ(知恵と戦いの神)、そしてアフロディーテ(愛と美の神)の3女神が激しく取り合いました。最高神ゼウスはこの判定をパリスという青年の羊飼いに委ねようと言います。すると我先に女神たちはパリスに言い寄るのでした。ヘラは世界の支配者にしてやろうとささやきます。アテナは全ての戦争に勝利をもたらすと約束すると言います。アフロディーテは、世界で一番美しい女性を妻にしてやろうと言います。世の男性方、あなたなら誰を選びますか。悩んだ末に若いパリスはその魅力に負けて、アフロディーテに黄金のリンゴを渡しました。選ばれなかった女神たちが激怒したことは言うまでもありません。パリスはヘラとアテナを敵にまわすことになります。このパリスは実はトロイの王子でした。パリスが生まれたとき、「この子はいずれ国を滅ぼすことになるだろう」と予言され、恐れたトロイの王プリアモスは、パリスを山に捨てたのでした。そしてパリスは羊飼いに拾われ、美しい青年に育っていました。

【シュリーマン展ブログ03】

考古美術室 T 

ページの先頭へ