刊行物

天理参考館報

天理参考館報 第32号

A4版・カラー図版4P・モノクロ78P、税抜き500円

2019.10発行

頒価:550円

(学)天理大学出版部


I 論文・研究ノート
 天理参考館所蔵の人形木棺(登録番号E1)について……藤井信之
 岸本五兵衛に関する覚書(その1)……中尾徳仁

当館が所蔵する海外民族資料(約3万点)の1割強を占めるのが、岸本五兵衛蒐集による「子壽里庫(ねずりこ)コレクション」である。岸本は大阪府西長堀で汽船会社を家業とする岸本家に生まれ、家督相続後は金融業・製造業・保険業等さまざまな分野に投資を行いつつ、国内外の郷土玩具や海外の民俗資料を多数蒐集した。本稿ではコレクターの視点からみた岸本の経歴、およびコレクションが形成された経緯について紹介する。

 世界隅から隅まで-当館創設者と海外巡教(その2)-……梅谷昭範

前稿(『天理参考館報第30号』に掲載)に引き続き、当館創設者である中山正善・天理教二代真柱が行った19度にわたる海外巡教を様々な角度から振り返り、そこで得られた知見がどのように教団運営や布教活動の上に反映されていったかを紹介する。本稿では、1930年に行われた中国への巡教について、その旅行記である『上海から北平へ』を基にして足跡を辿る。

 蹴鞠の鞠製作技術紹介 -池田游達氏の事例-……幡鎌真理

『天理参考館報第28号』において、蹴鞠保存会(しゅうきくほぞんかい)理事山本隆史氏による鞠の製作工程を紹介した。今回はそれとは別の事例として、けまり鞠遊会(きくゆうかい)池田游達(ゆうたつ)氏の技法を考察する。前回同様に一連の作業を動画に記録するなかで、機軸となるところを文章にまとめた。蹴鞠の鞠製作に関して現在まで伝えられた記録は少なく、主に2点の文献が参考にされている。それらと池田氏の手法を、生皮処理から完成まで各工程の違いを比較考察した。

 戦前発行の大阪市電皇室関連記念乗車券について……乾 誠二

本館が所蔵する山本不二男コレクションの中から、大阪市電(市営バス)が大正~戦前期に積極的に発行した皇室に関連する記念乗車券や乗換券などの乗車券類を、他の公営交通や私鉄等の発行例についてもふれつつ紹介する。また当時の乗換券の変遷について解説する。

 館蔵オオツタノハ製貝輪……藤原郁代

縄文時代の貝輪には、オオツタノハという貝で作った例がある。オオツタノハは大隅諸島や伊豆諸島といった暖かい海にしか生息していないにも関わらず、オオツタノハ製の貝輪は北海道から東海地方まで広がっており、海を越えた広域流通が確認できる重要な資料である。当館蔵の8点のオオツタノハ製貝輪を紹介し、検討を加える。

 天理参考館蔵アスターナ出土伏羲女蝸図の多角的研究-自然科学分析によって明らかになった新知見-……青木智史

天理参考館蔵の絹絵伏羲(ふくぎ)女媧(じょか)図はアスターナ古墓出土の伏羲女媧図の中でも保存状態の良い資料として知られているが、これまで考古学・美術史的研究はなされてきたが科学的な調査は行われてこなかった。そこで今回、蛍光X線分析など複数の科学調査を実施することにした。その結果、本資料が確かに絹製であること、顔料として石膏やベンガラ用いられていること、製作当初の絵画表現の推定など新たな研究成果を獲得することができた。

 西北イラン出土の青銅製獣頭飾角杯に関する補論……巽 善信・青木智史

『天理参考館報第9号』(1996年)で天理参考館が所蔵する伝西北イラン出土の青銅製角杯を紹介した。そこで、口縁部の破損している個所の観察から二重構造になっていることを指摘した上で、同じ青銅でも成分が異なるかもしれないと述べた。成分が異なれば発色にも違いが出てくる。本例は現在単色を呈しているが、製作された当時は色鮮やかなものであった可能性がある。そこで、それを確かめるため蛍光X 線分析を実施したところ、結果は興味深いものであった。それを報告するとともに、若干の考察を加え、補論とした。

II 事業概要
 1 展観
  (1)企画展 (2)天理ギャラリー展
 2 調査研究
  (1)海外民俗室 (2)日本民俗室 (3)交通文化室 (4)考古美術室
 3 資料収集
  (1)収蔵資料概要 (2)新収蔵資料
 4 普及活動
  (1)トーク・サンコーカン(公開講演会) (2)その他の講演会 (3)ミュージアムコンサート「参考館メロディユー」 (4)ワークショップ (5)平成30年度 文化庁 地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業「ヤマト・天理の歴史文化をめぐる」プロジェクト