刊行物

天理参考館報

天理参考館報 第35号

A4版・カラー図版2P・モノクロ58P、税抜き500円

2022.10発行

頒価:550円

(学)天理大学出版部


I 論文・研究ノート

 イラン出土の有柄青銅短剣について……巽 善信

イラン出土と伝えられる鉄器時代の青銅剣を本館は多数所蔵している。その多くは研究者である江上波夫氏と増田精一氏による将来品である。そのうち青銅有柄短剣15点を選び本稿で扱う。X線撮影を行い、その内部構造や製作技法を確認した。柄・刃の形態、内部構造、そして製作技法を元にこれらを分類し、痕跡器官などを通してその前後関係を導き、相対的な年代位置づけを試みた。

 中国大陸の古代熨斗(一)―熨斗型式(属性)の相違の意味を読み解く―……江 介也

中国大陸の古代熨斗(古代のアイロン)について、館蔵資料2点の詳細な観察・分析を手掛かりに、多角的考察を行った。筆者の既発表の型式分類を基礎に、一部補訂しつつ、その分類視点により館蔵資料の特徴を明らかにした。熨斗の火皿や柄の型式・属性の多様性には、道具としての実際の使い勝手・使用法にかかわる様々な創意工夫が反映されており、柄の握りやすさの追求や、使用法の相違による底部形態や重量との関係性などにも論及した。

 天理市杣之内火葬墓の被葬者像をめぐって……日野 宏

杣之内古墳群の東端に位置する杣之内火葬墓は舶載の海獣葡萄鏡を副葬した奈良時代の貴族の墓である。版築による重厚なつくりから、火葬墓の時期を元明上皇の薄葬の詔が出された『続日本紀』721年(養老5)以前のものとした。また、海獣葡萄鏡は中国唐代の武則天時代(在位690~705)に副葬が活発になったとする研究から、副葬された鏡は高松塚古墳の海獣葡萄鏡と共に慶雲元年(704)に第8回遣唐使によって持ち帰られたものと判断した。布留遺跡に拠点を置く物部氏は7世紀に石上氏に改姓するのだが、その被葬者は以上のことから養老元年(717)に正二位左大臣で亡くなった石上麻呂と考えた。
天理参考館の中国民間信仰関連資料③―道教や民間信仰の神像―……中尾徳仁

道教は数多くの思想から影響を受けて成立した多神教であるため、さまざまな神が祀られる。本稿では、天理参考館が所蔵する「道教や民間信仰の神像」の中で、千里眼・媽祖・順風耳・周倉・関羽・関平・范将軍・城隍神・謝将軍・保生大帝・中壇元帥・土地神・臨水夫人の神像資料を採りあげて紹介する。ただし道教神と民間信仰の神々との区別については諸説があるため、各神像がどちらに属するかについては明言を避けた。

II 事業概要
 1 展観
  (1)企画展 (2)天理ギャラリー展 (3)その他の展覧会
 2 調査研究
  (1)海外民族室 (2)日本民俗室 (3)交通文化室 (4)考古美術室
 3 資料収集・保存
  (1)収蔵資料概要 (2)新収蔵資料
 4 普及活動
  (1)トーク・サンコーカン(公開講演会) (2)ミュージアムコンサート「参考館メロディユー」 (3)ワークショップ (4)マンデートーク (5)天理市観光協会共催歴史講座