刊行物

天理参考館報

天理参考館報 第33号

A4版・カラー図版6P・モノクロ80P、税抜き500円

2020.10発行

頒価:550円

(学)天理大学出版部


I 論文・研究ノート

 布留遺跡布留(堂垣内)地区の石敷遺構出土土師器について……日野 宏

天理市に所在する布留遺跡布留(堂垣内)地区は1954年に天理参考館によって発掘調査が行われている。この時の調査では石敷遺構から土師器の高杯や小型丸底土器などのほか、滑石製勾玉・管玉・臼玉・有孔円板・剣形石製品などが多数出土しているところから、本遺構は古墳時代中期の祭場と考えている。本稿ではここから出土した土師器を紹介するとともに、当時の報道資料から石敷遺構で、まつりに際して火を焚く行為があったことを指摘した。

 天理参考館蔵ルネサンス期の木彫ヘラクレス像について……巽 善信

ルネサンス期の工芸・美術はギリシア・ローマの古代遺物を乗り越えようと必死にもがいていた。天理参考館はそうしたルネサンス期の木彫ヘラクレス像を所蔵している。これはギリシア古典期の大彫刻家リュシッポスの作品に影響を受けながらも新たなテーマを付け加えたオリジナルな作品で、まさに古代を超克したいという意図が見受けられる。X線CT撮影を実施し内部構造も明らかとした。こうした調査研究の成果を紹介し、学術的位置づけを試みる。

 初代小倉圓平と圓平人形 ―天理参考館所蔵資料の視点から―……中尾徳仁

当館は20世紀前期頃における中国東北部のさまざまな風俗を模した土人形(通称「圓平人形」)を61点所蔵している。これらの蒐集時期、および入手経路は不明である。ただし上記資料の大半が1938年に展示されていることから、その多くは戦前の蒐集品と思われる。これらを創作したのは、淡路島出身の陶芸家である初代小倉圓平(1887-1949)である。本稿では当館が所蔵する圓平人形の概要と、小倉のライフヒストリーについて紹介する。

 世界隅から隅まで―当館創設者と海外巡教(その3)―……梅谷昭範

前稿(『天理参考館報第32号』に掲載)に引き続き、当館創設者である中山正善・天理教二代真柱が行った19度にわたる海外巡教を様々な角度から振り返り、そこで得られた知見がどのように教団運営や布教活動の上に反映されていったかを紹介する。本稿では、1933年に行われたハワイを含む北米への巡教について、その旅行記である『アメリカ百日記』を基にして足跡を辿る。

 館蔵植民地期木製ケロの基礎的調査  ―装飾モチーフの解釈と顔料および象嵌素材の蛍光X線分析―……荒田 恵・青木智史

ケロとは木製の酒杯で、インカ帝国においては重要な祭礼用具のひとつとして用いられた。器表面に様式化された幾何学文様が彫刻されていたケロは、植民地期に入ると多彩色の顔料や染料で人物や動植物などのモチーフが描かれるようになる。そのため植民地期ケロの研究は装飾モチーフの解釈に重点が置かれてきた。しかし近年では彩色に用いられた白顔料の分析など、ケロ製作にかかわる研究も行われるようになっている。このような研究動向を踏まえて館蔵植民地期ケロの基礎的調査を実施した。

II 事業概要
 1 展観
  (1)企画展 (2)天理ギャラリー展
 2 調査研究
  (1)海外民俗室 (2)日本民俗室 (3)交通文化室 (4)考古美術室
 3 資料収集
  (1)収蔵資料概要 (2)新収蔵資料 (3)保存処理・修復
 4 普及活動
  (1)トーク・サンコーカン(公開講演会) (2)ミュージアムコンサート「参考館メロディユー」 (3)ワークショップ (4)平成31年度 文化庁 地域と共働した美術館・歴史博物館創造活動支援事業「ヤマト・天理の歴史文化をめぐる」プロジェクト