天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化階段状装飾のある鉢(かいだんじょうそうしょくのあるはち)

アメリカ合衆国 ニューメキシコ州
民族集団名:ズニ
20世紀中頃
高18.3cm 土器
資料番号:26517

展示中 1-0

アメリカ合衆国の南西部にあたるニューメキシコ州やアリゾナ州には「プエブロ」と呼ばれる先住民が暮らしています。そもそもプエブロとはスペイン語で「集落」を意味し、集住しながら主食であるトウモロコシを栽培する農耕民を指す呼称へと転じました。このプエブロにはアメリカ連邦政府が認定した21の民族集団が含まれており、ズニはその1つに数えられています。
ズニの人々がつくる土器は形状、絵付けともに非常にユニークで、土器づくりが盛んなプエブロの中にあっても異彩を放っています。掲出の土器の場合、まず目につくのは口縁部の階段状装飾ではないでしょうか。器体は角が円い方形を呈しており、四方の口縁がいずれも3段から成る階段状に切り立てられています。直線的かつ直角に形づくられたこの装飾は、積乱雲を象徴的にあらわしたデザインで、天に向かってもくもくと沸き立つ姿を力強く表現しています。
側面と内面に描かれている図柄も、この形状と無縁ではありません。まず側面に見られる亀甲のような図柄は雨雲を表しており、下に垂れ下がっている直線は雨を意味します。また、雨雲の左右の脇から出ている矢印は雷です。さらに器の内面にはヘビが描かれています。このヘビは舌を出していますが、舌先が先述の雷と同様に矢印となっていることを考えますと、ヘビの姿かたちと稲妻を重ね合わせているのかも知れません。
積乱雲、雨雲、ヘビといったデザインが組み合わされたこの土器には、農耕を行う上で欠かすことのできない降雨への切実な願いが込められています。日本でも雨乞いの儀式が伝統的に行われてきたように、年間降水量が極めて少ない地域に暮らすズニの人々にとって雨は天からの恵みと考えられています。