天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化東北各地の天神人形(とうほくかくちのてんじんにんぎょう)

tenjinningyo

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三春張子(前左) 福島県 全高24.7cm
会津若松張子(前中) 福島県 全高20.0cm
気仙沼土人形(前右) 宮城県 全高18.3cm
久之浜張子(後2体) 福島県 全高25.5cm、全高24.0cm

年代:昭和戦前~昭和43年
資料番号:21053、15906、15908、21055、69.0498

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天神人形は菅原道真(849~903)を祀った天神信仰から生まれ、その姿をかたどった人形です。土製、木製、紙の張子製、おがくずを糊で固めた練物製など各種あり、全国各地に広く分布していて天神人形がない地域はないと言っても過言ではありません。
東北地方には三大土人形の産地があり、宮城県の堤人形、山形県の相良(さがら)人形、岩手県の花巻人形がそれにあたります。これらは江戸時代に土人形の創始とされる京の伏見人形の影響を受けて作られ始めたものです。しかし伏見人形の単なる模倣に終わらず,それぞれ独特の型を生み出し,特徴のある彩色が花開きました。いずれも個性的で優美な人形たちです。その他にも東北各地で製作されていますが、そのうちの宮城県気仙沼の土人形は堤人形の型をもとに農村の祭礼や節句飾り用に作り出されました。荒い土肌と技巧を凝らさない彩色、朴訥(ぼくとつ)とした表情が印象に残ります。
張子人形は福島県が有名で、産地として三春、会津若松、久之浜(ひさのはま)などがあります。三春は梅、桃、桜が一斉に花開いて春の訪れを告げることから称せられる地域ですが、デコと呼ばれる張子人形の製作が江戸時代から農閑期の副業奨励として盛んにおこなわれていました。木型に和紙を直貼りして表面に糊を塗って乾燥させたあと、小刀で切れ目を入れて型を抜き取る張り抜き技法で作られ、細工、彩色を施して仕上げます。細工として竹、厚紙、紙縒りを差し込みますが、この工程をとりくみと言い、これによって変化が生じて豪華さが増すのが三春張子の強みです。天神でも男雛のように太刀を差し、冠の瓔(えい)を別に作って屹立(きつりつ)させるなどひと手間かけられています。久之浜張子は幕末の創始で、象乗り童子や浦島太郎と亀のように二種の張子を組み合わせ、動物類は首振り式になっているのが特徴です。明るい色調が基本で、久之浜にかかると天神さまもおおらかで気さくな雰囲気です。会津若松では雛節句に天神が飾られました。天神の頭(かしら)は会津特産の桐の木粉を固めた練物製で、胡粉を塗り重ねて磨いています。手間のかかる製法は、雛人形の頭と基本的に同じ作り方です。木製二重の台座に座した天神は“会津雛”と称されるにふさわしい上品な顔立ちです。