天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化儀礼格闘技「ムカレカレ」の武器と盾(ぎれいかくとうぎ「ムカレカレ」のぶきとたて)

インドネシア バリ島 トゥンガナン村
民族集団名 バリ・アガ
20世紀後半
武器:最長34.0cm 盾:直径68.0cm
資料番号:武器:2019E115 盾:2019E116

展示中 1-0

本例は儀礼格闘技「ムカレカレ」で用いられる武器と盾です。
トゥンガナン村はバリ島の東北にそびえる最高峰アグン山を望む山間村落で、バリ島の先住民であるバリ・アガの村です。そして、彼らの最高神であるインドラ神へ奉納するために先住民バリ・アガの男性によって行われる格闘競技がムカレカレです。今日のバリ島の住民の多くは、16世紀前半にヒンドゥ・ジャワ王国であるマジャパイト王国が滅亡した際にジャワ島からバリ島に逃れてきた保守勢力の末裔であるといわれます。そのためバリ島では一般にシヴァ神を最高神に戴いていますが、「純粋のバリ人」を称するバリ・アガの人々はインドラ神によって村と自分たちの祖先が創造されたと信じています。
ムカレカレは6月から7月のウサバ・サンバー儀礼において行われます。上半身裸で腰から尻にかけてクンブンあるいはサプッと呼ばれる腰帯を着用した男性2人が、左手に防御用の盾タミアンを、右手には攻撃用の武器を持って戦います。武器は棘のある植物パンダン・ルンギス(あるいはパンダンドゥリ)の葉を束にしたもので、盾は「アタ」と呼ばれるツル科植物、「ロタン」と呼ばれる籐、木材、そしてシュロの幹の繊維などを用いて作られます。棘のついた葉の束で相手の体を叩いてそれを擦りつけあい、一方が流血するまで続けられます。そのため、儀式を終えた男性の体には多くの擦り傷がみられます。
バリの古代史文書「ウサナ・バリ」によると、ムカレカレは力強さと勇猛さを試すためにあるといわれます。この儀礼を奉納するインドラ神は、古代インド、ヴェーダ時代の神で、戦争の神です。この神がバリ・アガにおいて創造神、そして最高神として崇められていることは、ムカレカレが儀礼格闘技として奉納されることを理解させてくれるのです。