天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化オオアリクイの精霊面(おおありくいのせいれいめん)

ブラジル シングー川流域
民族集団名:カヤポ
20世紀末
高152cm オオミテングヤシの葉など
資料番号:97-89

展示中 1-0

ブラジル、アマゾン川の支流の一つ、シングー川の流域には、一般社会と距離を置きながら伝統的な生活様式を守り、狩猟と採集を行うインディオ(ブラジルにおける先住民の総称)が暮らしています。数多くの民族集団が小規模な集落を形成する中、相対的に多くの人口を擁するのが「カヤポ」という民族集団です。
カヤポの人々は自然に対する畏敬の念から、様々な儀礼を行いますが、掲出の仮面は儀礼用のオオアリクイの姿を擬した精霊面です。オオアリクイは中南米に広く生息する動物で、その名の通りアリをよく食べます。小さな穴に閉じこもったアリを、長い舌を使い巧みに捕食する姿は、アマゾンに生息する無数の動物の中でも、特異な存在感を発揮しているといえます。カヤポの人々はオオアリクイを食用に捕獲する一方、その存在に敬意を表し、精霊面に姿かたちを写しとります。
主な材料はオオミテングヤシという椰子の葉で、素材を垂直に並べ、円錐状の本体を作ります。裾に当たる部分には濃い色の植物繊維を長く垂らし、かぶる人の全身をほぼ覆い隠すかたちにします。袖のようなものが左右に付けられていますが、これらは飾りで、実際に腕を通すことはできません。そしてオオアリクイの特徴をよく表しているのが、頭頂の部分です。円錐の頂点を紐でぐるぐる巻いて縛ることによって、オオアリクイの細長い口を表現し、両眼に相当するものとして貝殻を貼り付けています。また、先端から垂らす、ピーズと羽根飾りがあしらわれた紐は、長い舌を表しています。
儀礼の際、この精霊面をまとった者は集落の家々を一軒ずつ巡回します。そして精霊が訪れた家には幸福がもたらされると考えられています。この風習を日本に照らし合わせたとき、まず想起されるのは秋田県男鹿半島の「なまはげ」です。さらに山形県上山市で行われる「加勢鳥」という民俗行事は、装束までよく似ています。こうした人々の考え方や、儀礼のかたちの類似性を認識すると、遠く離れたブラジル先住民の存在も少し身近に感じられるのではないでしょうか。