天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化土人形「西瓜売り」(つちにんぎょう「すいかうり」)

中国 天津市
20世紀前半
高24㎝ 土、針金、竹など
資料番号:11841

展示中 1-0

本品は天津市の人形工房「泥人張(ニィレンチャン)」でつくられた、西瓜売りを象(かたど)った土人形です。粘土を手で捻(ひね)って形を整え、表面に彩色を施しています。手に団扇(うちわ)を持ちながら突き出た腹部を晒(さら)し、大きく口を開けた姿が、暑い夏に声を張り上げて西瓜を売る雰囲気をよく醸(かも)し出しています。
人形の胴と頭部、腕部は別々に作られています。頭部(顔)は人物の表情を出すため念入りに成形され、首に付いた長い竹串を胴の穴に差し込んでいます。腕部は、肘部分から伸びた針金を背中まで突き通すことで胴と繋(つな)いでいます。しかし可能な限り写実性を求めた為にバランスが悪く、背後にある2本の針金の補助無しでは自立が難しい状態となっています。なお、右手の団扇は土製ではなく、薄い金属板の上に彩色して作られています。
『泥人張作品選』(人民美術出版社、1954年)によりますと、「泥人張」は張明山(1826-1906)によって創始されました。彼は8才の時から父の張萬全と共に土製玩具を作り生計を立てていましたが、18才で京劇役者の余三勝に瓜二つの像を作って高い評価を得て、やがて世間に名を知られるようになります。その後、第二代の張玉亭(1863-1954)、第三代の張景祜(1891-1967)、第四代の張銘(1916-1995)および張鉞(1927-1991)と技術は受け継がれ、現在は第五代の職人が制作しています。
なお、当館が所蔵する「泥人張」の作品は、本品以外にも「油売り」「手品師」「僧」などがあります。