天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術赤褐色磨研動物文壺形土器(せきかっしょくまけんどうぶつもんつぼがたどき)

イラン ササン朝ペルシア後期(6~7世紀) 
高18.2cm
資料番号:39-29

展示中 3-17

球形の胴部にラッパ状に開いた口頸部が付いています。底部は内反りした平底です。口縁部には帯状突帯が、肩部には連続押文突帯が巡っています。胴部にはメダリオン風の浮出文様が3つ施されています。よく見ますとそれぞれ円で囲まれた内側に羊、山羊、犬(牛?)が描かれていることが分かります。ササン朝ペルシア(3~7世紀に今のイラン・イラクを中心とした地域で栄えた王朝)で作られた磨研土器です。赤褐色を呈する良質の粘土で成形した後で、磨きを加えます。磨きとは、表面を石ころや骨・竹などの平らで滑らかな道具を用いて表面を平滑に磨きあげる技法です。何度も擦ることで、土器表面の砂粒は沈められ細かい粒子が浮かぶことで、きめ細かい面に仕上げることができます。粘土に鉄分が多く含まれているので焼くと赤褐色になります。土器でも上質のものです。
ササン朝では銀が最も価値ある材質でしたので、重要で貴重なものは銀で製作されていました。したがって銀製品は憧れの品でもありました。銀製品を手にすることのできなかった人はその代用品で我慢することもあったでしょう。あるいは銀製品は大事に仕舞っておいて日常的にはその代用品を使ったり、部屋に飾ったりしていたかもしれません。
本例と類似したササン朝の銀製壺は大英博物館やルーブル美術館など有名な博物館・美術館に所蔵されており、よく知られています。貴重な銀製品は早くから入手され今日まで大事に保管されてきたのです。本例はそうした銀製壺の代用として作られたものです。価値は低かったことが災いしてか、土器となると意外と現存しておらず、結果として珍しいものとなっています。