天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術正装した女性の埴輪(せいそうしたじょせいのはにわ)

群馬県太田市世良田町出土
古墳時代後期6世紀
高さ57.6㎝
資料番号:日959

展示中 1-0

埴輪は古墳の上に立て並べるために作られた、古墳時代独特の焼き物です。円筒形の円筒埴輪と、道具類・鳥・家・動物・人物などの形をした形象埴輪に分けられます。円筒埴輪は古墳時代の始まり頃に出現しましたが、形象埴輪が作られるようになったのは少し後でした。さらに形象埴輪の中でも出現時期には差があって、道具類と家と鳥が早く、動物と人物は古墳時代の中頃になってから生み出されたものです。
人物埴輪には当然のことながら男性と女性がありますが、男性の埴輪は武装をした武人や冠をかぶった地域の王など、いろいろな人を表現するのに対して、女性の埴輪は髪を結い上げて正装をした姿ばかりです。王の近くに仕える女性を表しているのでしょう。
この埴輪も、髪を結って額に飾り櫛を挿し、首飾りと耳飾りをつけ、前身頃を紐で結び合わせる上着を着た、典型的な女性の埴輪です。出土地である群馬県からは、優れた造形の人物埴輪が多数出土しています。この埴輪と顔がそっくりな埴輪が、同じ群馬県の高崎市にある綿貫観音山古墳から出土していて、ふたつの埴輪は同じ埴輪工房で作られたと考えられます。出土地は約20㎞離れており、当時の埴輪生産と流通を示す一例です。
さらに出土地の世良田町は、当館の所蔵品でありこのセレクションでも紹介している重要文化財の武人埴輪の出土地と同じです。武人埴輪の出土記録には「女子土偶(埴輪のことでしょう)」と一緒に出土したと書かれています。それがこの埴輪であるのかどうかは、残念ながら分かりません。