天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術成吉思皇帝聖旨牌子(ちんぎすこうていせいしはいし)

モンゴル帝国 13世紀
長20.1cm 黄銅鍍金
中国・旧熱河省出土
資料番号:中1212

展示中 3-17

本資料は、モンゴル帝国時代初期にジャムチ(站赤)と呼ばれる駅伝制度で用いられた通行証・資格証(牌子)です。かつては全面に鍍金が施されていたと推定される資料で、現状でも部分的に黄金色を呈しています。
駅伝制度とは、一定の距離ごとに駅(站)と呼ばれる人や馬、車などを常時備えた施設を設置し、効率的に駅を伝って往来する交通・通信制度のことです。広大な版図を有する国家において中央と地方が効率的に連絡を取る手段として発達したもので、古代中国王朝ではかなり初期の段階から利用されてきたことが知られています。この駅伝制度を特に有効活用したことで知られるのは、人類史上最大級の版図を誇ったモンゴル帝国で、その広大な領域を管理・維持するために駅伝制度の充実が図られました。これがジャムチ(站赤)と呼ばれる駅伝制度です。本資料は、その駅伝制度において用いられた通行証・資格証なのです。
本資料において特に注目されるのは、表面に「天賜成吉思皇帝聖旨疾」の10字が刻まれていることでしょう(裏面には2字の契丹文字が刻まれている)。「成吉思皇帝」という言葉は、チンギス・ハン(成吉思汗)の中国側における呼び名の一つとして知られています。この表面に刻まれた10字については、チンギス・ハン在世期に南宋の使者としてムカリ国王のもとに訪れた趙珙が記した『蒙韃備録』の中に同文が記述されており、その中で紹介されている素金牌(そきんはい)と呼ばれる牌子にこの10字が刻まれていると記されています。おそらく本資料はこの素金牌に該当すると考えられます。牌子については、マルコ・ポーロの『東方見聞録』でも紹介されており、モンゴル帝国の皇帝から与えられたこの通行証を持っていれば、帝国内の至る所に存在した宿舎や馬などが自由に利用可能で、長距離を円滑に移動することができた事が記されています。
本資料は、モンゴル帝国のチンギス・ハン在位時代およびその直後の時期(13世紀前半)に使用されていたと推定される重要な資料といえます。