天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術巫女形埴輪(みこがたはにわ)

奈良県北葛城郡河合町貝吹出土 古墳時代中期
高さ54.5cm
資料番号:日976

展示中 1-0

衣の上に意須比(おすひ)とよばれる幅の広い袈裟(けさ)のような布帛(ふはく)を巻いているところから、巫女(みこ)であることがわかります。その上には襷(たすき)とゆるく結んだ帯が表現されています。同様の埴輪は大阪府蕃上山古墳からも出土しています。前に突き出した両腕の先は失われていますが、他の例から判断してこれは杯を捧げる巫女の姿を表したものとみられます。古墳時代中期にはすでに巫女形埴輪は現れています。
群馬県高崎市保渡田八幡塚古墳の外堤上には長方形に円筒埴輪で囲われた中に形象埴輪群が配置されていました。そこには冠を被って椅子に座る王の正面に、意須比を着た巫女が王に杯を差し出す姿が復元されています。この埴輪群の中心的な情景であることがわかります。当館3階の常設展示場を入った正面には重要文化財のあぐらをかく首長の埴輪(盛装男子埴輪)が展示されていますが、これも巫女からの捧げものを受ける王として古墳に配置されていたのでしょう。
大阪府の今城塚古墳の外堤からは4区に分かれて多数の家形埴輪や柵形埴輪、各種の器材埴輪、人物埴輪、動物形埴輪が発見されています。これらは首長の主催する祭場を再現したものとみられますが、人物埴輪には複数の巫女形埴輪がみられます。両手を上げるもの、弓かとみられる棒状具をもつもの、杯を捧げるものなどがあり、巫女が祭場で重要な役割を果たしていたことがわかります。