天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術コリントス式アリュバロス (コリントスしきアリュバロス)

前7~6世紀 ギリシア・コリントス
高さ9.0cm 陶器
資料番号:資料番号:E109

展示中 1-0

主に香油を入れるアリュバロスと呼ばれるコリントス式ギリシア陶器です。オリエントから自由な作風がギリシアに伝わり、その影響で次第に動植物や狩猟図などをいきいきと描き出すようになります。これを東方化様式と呼びます。交易が盛んだった古代都市コリントスは、いち早くこれに反応したところで、コリントス式を生み出したのです。シルエットをベタで描き、細部の描写を掻き落としの線で表現するのが特徴です。この技法はアッティカに伝わり、後に黒像式ギリシア陶器へと発展します。
平たく開いた口縁部にはロゼット文と連珠文、胴部には羽を大きく広げて羽ばたくセイレーンが描かれています。セイレーンはギリシア神話に出てくる、女性の顔と鳥の体を持つニンフ(妖精)です。セイレーンの歌声は甘く美しく、聴いた者は陶酔し、混乱に陥り海に飛び込んで死んでしまうとされていました。挙げ句の果てには、セイレーンに食われてしまうのです。サイレンの語源はこのセイレーンなのです。
トロイ戦争の英雄であるオデュッセウスはセイレーンの歌声を聞いています。オデュッセウスは船員たち全員に耳を蜜蝋で塞ぎ、耳栓をしないで帆柱の根元に立つオデュッセウス自身を動けぬよう厳しく縛りあげるように指示しました。セイレーンが美しく歌う中、オデュッセウスはもっと聴きたくて縄を解くように船員たちに頼みましたが、聞こえない船員たちは一心に漕ぎ続けました。それでセイレーンを行き過ぎることができたのです。セイレーンの歌声を聞いて無事に帰還した唯一の人物と言えます。
後にセイレーンは人魚と重なっていき、半身半魚で表現されるようになります。某コーヒーチェーン店の半身半魚をしたロゴマークは人魚ではなく、セイレーンだということをご存知でしょうか。