天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術甲骨文(こうこつぶん)

中国 河南省安陽市 殷墟遺跡出土
殷後期 前13世紀~前11世紀
(左)長さ14.8cm 獣骨
(下)幅 10.3cm 亀甲
資料番号:34-25、067-126

展示中 3-16

現在私たちが使っている漢字は、文字通り古代中国で生み出された文字で、その起源は古代文字「甲骨文(こうこつぶん)」に求めることができます。つまり、甲骨文(甲骨文字)はメソポタミヤの楔形文字(くさびがたもじ)やエジプトのヒエログリフと同様の古代文字でありながら、一部は漢字として今もなお用いられ続けている極めて稀な存在なのです。
甲骨文は3000年以上前に出現した現在知りうる最も古い中国の文字で、主として亀甲や獣骨に刻まれました。現在までに確認されている甲骨文は数千字にのぼりますが、まだ全ての文字が解読されたわけではありません。現在の漢字に直接繋がる文字もあれば、漢字には繋がっていないと思われるものも多くあります。しかし、今の我々から見てもそのまま読むことが可能なものも存在し、現在まで脈々と受け継がれている文字であることを実感することができます。2017年にはその文化的価値と歴史的意義が高く評価され、甲骨文は「世界記憶遺産」に採択されています。
よく知られているように、古代中国では亀甲や獣骨を焼いてその割れ目の出方(卜兆)をもとに卜占(ぼくせん)を行いました。甲骨文は、卜占の内容やその結果などを記すために用いられた文字でした。例えば、殷王(いんおう)の行動の可否や、天候や作物の出来の良否、疫病(えきびょう)や様々な祟(たた)りなどについて卜占されました。掲出の資料にも、天候、禍(わざわい)の有無、犠牲(ぎせい)の内容についての記載を読み取ることができます。これらの甲骨文は、3階に常設展示されている資料で、いずれも殷墟(いんきょ)遺跡から出土したと考えられるものです。殷墟は、殷王朝の首都であった場所です。現在知られている甲骨文資料の大半は、この殷墟遺跡とその周辺で出土しています。
なお、当館は国内有数の質と量の甲骨文資料を収蔵しています。この中には甲骨文研究で大きな功績を残した羅振玉(らしんぎょく)、王国維(おうこくい)両氏旧蔵の資料も含まれ、甲骨文研究史上の重要な資料となっています。