天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術馬具 八角形の雲珠(ば ぐ  はちかっけいのうず)


群馬県出土 古墳時代後期 6世紀
幅13.7㎝
資料番号:068-220

展示中 1-0

【重要美術品】

馬はもともと日本列島に生息していた動物ではなく、古墳時代の中頃に朝鮮半島から連れてこられて定着しました。馬を飼うためには広い土地や飼育の方法を知っている人や馬具が必要なので、その時期には馬を所有することが大きな権力の証となりました。権力者達は盛装して馬にまたがり、その姿を人々に見せることで自らの権威を示したのです。
そのような訳で古墳時代の馬具には、人が乗るために必要なハミや鐙、鞍以外に、馬を飾り立てるための道具がたくさんあり、むしろそちらに当時の馬具製作技術の粋が尽くされていると言えるかもしれません。この雲珠(うず)という馬具も、馬を飾る道具のひとつです。鉄製の本体を金銅の板で覆ってあるため、金色に輝いています。装着する時は馬のお尻、尾の付け根の上あたりに革紐で固定します。多くの場合は同時に馬のお尻の周りや胸にも、雲珠と同様に金色に輝く馬具(杏葉:ぎょうよう)を装着したので、馬が歩くと太陽の光で雲珠や杏葉が金色にきらめいて、馬にまたがる権力者は立派に見えたことでしょう。
雲珠はほとんどが円形で、このような八角形の雲珠はほかに例がありません。円形の雲珠より高度な製作技術が必要であり、重要美術品となっています。残念ながら一緒に使われた杏葉は知られていません。出土地である群馬県は、古墳時代後期に大型の前方後円墳が多数造られた地域であり、美しい馬具や変わった形の馬具が出土しています。
馬が人々の暮らしに溶け込んで、農作業や運搬などに使われるようになるのは、奈良時代頃のことでした。