天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術玉刀(ぎょくとう)

中国 龍山文化(B.C.2500~B.C.1900)
長さ36.2cm 玉
資料番号:中61

展示中 3-16

オリーブ色がかった乳灰色の包丁形の玉器です。全体に暗い濃緑色の紋理(紋様・すじ)がみられ、片側には斜めに大きく乳白色の紋理が走りアクセントとなっています。玉刀とよばれるものは、新石器時代の後期には確実に存在しており、続く二里頭文化期にも引き続きつくられていたようです。
玉刀の形態的特徴は、概ね横長の台形に近い外形を呈していることで、幾つかのバリエーションがありますが、本例は左右対称ではないタイプです。一方の短辺は直線、もう一方の短辺は曲線にデザインされています。また孔が幾つかあけられているのも、多くの玉刀にみとめられる共通点です。多いものでは例えば5つというものがありますが、本例は2つで、上部両側に各一つずつ孔があります。刃部は横長台形の底辺の位置にあり、片刃でわずかに内反りとなっているのも大きな特徴と言えます。
龍山文化期の石製品の中に、玉刀と多くの共通点がみとめられる所謂「石包丁」があり、そのことから「石包丁形玉器」と称する研究者もいます。素材が貴重な「玉」であること、農具である石包丁を原型としつつも、農具としての実用サイズよりも大型のものが多く発見されていることなどから、農耕がかかわる儀礼で用いる祭器として作られた可能性が考えられます。