天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術円形切子ガラス碗(えんけいきりこがらすわん)

イラン、ギーラーン州
5~6世紀
高 9.0 ㎝
資料番号:36-120

展示中 3-17

ササン朝ペルシアで作られたガラス製碗です。ササン朝は今のイラン、イラクの大部分を中心とした地域を支配していた王朝で、3世紀に興り7世紀に滅んでいます。厚さが1センチほどもあり、ガラス製品としましては分厚いと言えます。しかも下に向かうほど厚くなっています。重心は低く、とても安定しています。淡褐色を帯びていますが、本来は透明なガラスでした。長年土の中に埋もれていたことで化学反応が起き、透明さを失ったのです。
金属のパイプに熔けたガラスを巻き付け、もう片方の口から息を吹き込んで膨らませる宙吹(ちゅうぶ)きと呼ばれる技法で成形したものです。外面にはびっしりと円形切子のみを施しています。切り合いがなく、きれいな円形をなしています。グラインダーで削って文様の付いたガラス製品をカットガラスと呼びます。日本語では切子と言います。また分厚いのでカットは深くなり、より光が屈折することできらめきが増します。
蛍光X線分析により本例のガラス成分は判明しています。分析結果はササン2タイプに分類される植物灰ガラスでした。これはササン朝後期に見られる素材で、きわめて純度の高い上質ガラスです。
本例と同類のガラス碗が大量に生産され、その一部は交易品として東方に運ばれています。正倉院宝物の白瑠璃碗(はくるりのわん)もその1つです。実は白瑠璃碗と双子のような碗がもう1点、日本にあります。大阪府羽曳野市の高屋築山古墳(安閑天皇陵)から出土したと伝えられるものです。両者ともササン朝で作られ、遠く日本まで運ばれたのです。