天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術双魚文熨斗(そうぎょもんうっと)

 

 

中国  新~後漢 1~2世紀頃
長35.1cm  青銅
資料番号:中817

展示中 1-0

熨斗とは、布類の皺をのばし平滑にする機能を持った道具で、昔のアイロンです。中国大陸で前漢時代に誕生しました。完全な鉄器時代に入ってから登場した比較的新しい種類の青銅器といえます。火皿部と柄で構成され、火皿に炭を入れ加熱し、柄を握って前後左右にスライドして使用します。
本資料は、現代のアイロンとは異なり底部が平らではなく、緩やかな丸みを帯びています。最大の特徴は、内底に同じ方向を向いた2匹の魚(双魚)の紋様が鋳出されていることです。魚の表現は非常に写実的で、コイやフナが最も近いと考えられます。本例ではヒゲは表現されていませんが、類例を考慮すると、コイをあらわした可能性が高いのではないでしょうか。また柄の部分の緑青(錆)には、布のようなものが巻かれていたのではないかと思われる凸凹が微かに観察できます。熱くなった柄を、素手で握るための一つの対処法だったのでしょう。
熨斗は、日本では「火」を頭につけて「火熨斗」と書き「ひのし」とも呼ばれます。少数の古墳から副葬品としての熨斗が発見されており、古墳時代に伝わったことが分かっています。天理参考館のある奈良県では、橿原市の新沢千塚126号墳から出土したものが知られています。しかし発見数からみて古墳時代の日本では普及しなかったようです。