天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術加彩鎮墓獣(かさいちんぼじゅう)

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中国 唐 8世紀
高左34.2㎝・右35.4㎝ 陶製
資料番号:左2010A1・右2010A2

展示中 1-0

鎮墓獣とは、邪悪なものを退け、墓への侵入者を威嚇する事を目的に作られた、獣形の陶製明器です。最古の例としては、戦国時代の楚(そ)の墓より出土する鹿の角をはやした舌出しの木胎漆器が有名です。これは体が人間とも動物とも捉えがたく、獣というよりは神的意義付けがなされることが多いことから、「鎮墓神」と呼ばれることもあります。確実に獣として捉えられる、最古の鎮墓獣は漢代に出現した歩行型の鎮墓獣でしょう。
鎮墓獣の形には大きく分けて、歩く四足歩行(しそくほこう)型、うつぶせの伏臥(ふくが)型、座る蹲踞(そんきょ)型などがあります。漢時代に登場する一角獣のような四足歩行型が誕生したのち、伏臥型を経て、蹲踞型へと発展しますが、蹲踞型は南北朝時代から隋唐時代以降にかけて盛行します。南北朝時代の蹲踞型鎮墓獣が、清代まで続く辟邪信仰の先駆けになったと考えられます。
掲出は背に翼をもち、頭部の2本の角が螺旋状に絡みついて一角を表現した鎮墓獣です。顔を除くと、蹲踞の姿勢をとるなどほぼ同じ造形をしています。翼は羽毛が進化したもので、個々に延びて火焔状になります。色付けは三彩とは違い、釉をまったく用いず、鉱物質の絵の具(顔料)で彩色した「加彩」と呼ばれる手法で行われます。顔は人間と獣の顔を表していますが、この2種類の顔を表現するのが鎮墓獣の特徴といえます。どちらも口を閉じて髭を生やし、大きな目と耳をもちます。恐ろしい顔を作り2体を墓前に置くことで、悪霊を退け、被葬者を守護することができたのでしょう。