天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化錦絵「東京上野鉄道開業式諸民拝見之図」(にしきえ「とうきょううえのてつどうかいぎょうしきしょみんはいけんのず」)

tokyouenotetsudokaigyo

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地域:東京 1884年(明治17)
縦36.8cm 錦絵3枚続 歌川広重(三代)
資料番号:交91 0505

展示中 1-0

明治5(1872)年に新橋横浜間で産声を上げた日本の鉄道は、当初政府の直営でした。その後、関西や北海道でも官営の路線が開業しましたが、西南戦争の巨額出費等によって政府は財政難となり、華族や士族を含む民間資本の活用を目指して、半官半民の日本鉄道が明治14年に設立されました。
明治16年に上野熊谷間が開業、同17(1884)年6月25日、明治天皇臨席のもと仮駅舎にて上野高崎間の開業式が挙行されました。東北方面の玄関口らしい、煉瓦造・頭端(とうたん)式ホームの立派な初代上野駅舎が完成したのは開業式翌年の明治18年のことです。
本図は華やかな開業式を演出するため、仮駅舎で開催された開業式を描いたものではなく、広重自身が明治10年に関西の鉄道開業を描いた「西京神戸之間鉄道開業式諸民拝見之図」の図柄を流用し、画題を差し替えたものです。当時最新鋭の交通機関であった鉄道の開業は、同じ図柄を繰り返し版行するほど人々の関心を集めた一大イベントであったということがうかがえます。
日本鉄道の路線決定や建設・運営には政府や官設鉄道が深く関わり、特に地方の路線では国有地の提供や金利の肩代わりなど優遇措置がとられていました。その後明治24年には上野青森間(東北本線)が全通し、ほかにも高崎線、常磐線など多くの路線が建設されました。
日清・日露戦争を経て軍事面から鉄道国有化の気運が高まり、明治39年に鉄道国有法が成立し、日本鉄道を含む主要17私鉄は買収・国有化されて、官設鉄道と合わせて全国に及ぶ国有の鉄道網が完成しました。日本鉄道は買収された私鉄の中でも最も規模が大きく、東日本の鉄道網形成に重要な役割を担ったと言えます。