天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の生活文化肩掛けビンロウ袋(かたかけびんろうぶくろ)

台湾 西南部
民族集団名:シラヤ族(推定:マカタオ)
20世紀中頃
縦18.5㎝ 横37.0㎝
資料番号:81-189

展示中 1-4

この肩掛け袋は、主に嗜好品であるビンロウ(檳榔)の実を入れ、持ち歩くものです。台湾西南部の先住民、シラヤ族のサブグループであるマカタオの男性が携帯したもの、とのいわれがあります。本来は肩に掛けられるように紐が付いていましたが、本品は脱落しています。白綿地の上に木綿の色糸で、鳥や花など繊細な文様が刺繍されており、丸十字形の鉛でできた環はシャーマンの備品の一つと言われています。こうした袋の製作は女性が行い、自分の夫や恋人に贈ります。しかしながら、いまではこうした細かな刺繍が施された袋を携帯するシラヤ族の人々を見ることは難しくなりました。
ところで、袋に収められるビンロウとはどういったものでしょうか。ビンロウの実を噛む「ベテル・チューイング」と言われる嗜好習慣は、日本では馴染みが薄いですが、アジア、オセアニアなど広い地域で見られるものです。台湾でも漢民族、先住民ともにビンロウの種子を嗜好品としてたしなみます。ヤシの一種であるビンロウの実に少量の石灰をまぶし、それをキンマの葉にくるんで噛み砕きます。噛み続けると口の中は赤色になり、実は飲み込まずに唾液とともに吐き出します。ビンロウの実に含まれるアルカロイドという成分には覚醒、興奮作用があり、ニコチンのような依存性もあるといいます。
一方、シラヤ族などの先住民にとってビンロウの実は、単に嗜好品としてだけではなく、宗教儀礼に使われる供物、見合いや結婚の贈答品としての一面も備えています。