天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術女性の埴輪(じょせいのはにわ)

 

 

推定茨城県出土
古墳時代後期 6世紀
高さ 31.2 ㎝
資料番号:日962

展示中 1-0

人物埴輪は、男性は首長や武人、農作業中の人から力士まで、さまざまな人が作られたのに対して、女性はどれもがほぼ同じような服装で、同じような姿勢をとっています。それは髪を頭頂部に結い上げて、額に櫛を差して飾り、首飾りや耳飾りをつけて、正装する姿です。そして手を前や横に上げています。そこで女性の埴輪は、巫女のような立場の女性であると考えられています。
この埴輪も、結い上げた髪と下半身は失われていますが、首飾りをつけて両手を左右に大きく広げています。額には櫛を差し、顔の上半分の輪郭と鼻筋には赤色を塗っています。お化粧をしているのでしょう。口を開けているので、歌っているか何かを唱えているのかもしれません。この埴輪には珍しい特徴があります。背中を横線で3段に分けて、それぞれの段に点々を描くのです。指で手早く描いた風で、丁寧な細工とは言えませんが、このような文様を描く埴輪はあまりありません。胸には何も描いていないので、この文様は服を羽織っているか、何かを背負っていることを表しているのでしょう。
一見して立派な埴輪ではありませんが珍しい例であり、表情は愛らしく、埴輪工人の指の動きまで想像できる、親しみやすい埴輪です。