天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術船文双耳壺(せんもんそうじこ)

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エジプト ナカダⅡ期(前3500年頃)
高14.8cm 土器 
資料番号:40-34

展示中 1-0

エジプトと言えばピラミッドに象徴される巨大な王国を思い出しますが、それより古い時代に古代国家を生み出す胎動がありました。こうした先史時代を先王朝時代と呼んでいます。
本例はその先王朝時代の彩文土器です。卵形をした胴部に広めの口縁部と小さな耳(把手)が付いています。一面に文様が描かれています。メインは上半部一面を飾っている、ナイル川を渡っていた船です。よく見るといくつかのパーツから構成されていることが分かります。湾曲した船体から出る無数のオール、船室、植物の枝、船ごとに異なる旗のような印、舵です。船の下には、方形の幾何学文様があります。これは一般に船のマストを表しているとされています。
類例はたくさん発見されていますが、施されている文様はだいたい似通っています。ある決まった文様だけを選び出されていることになり、記号性とメッセージ性の強い彩文と言えます。
この種の彩文土器は主にエジプト南部に広く分布します。時代名称ともなっているナカダ遺跡は、19世紀に有名なイギリスの考古学者フランダース・ペトリーが多数の墓を発掘したところです。彼はどの墓が一番古いのかを明らかにするために、墓に副葬されている土器に注目し、独自の編年法を確立しました。この研究方法が日本に伝わり、土器研究に応用されたのです。ペトリーが観察した土器の中にもこれに似た彩文土器がたくさんありました。