天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術土偶(どぐう)

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北海道余市郡余市町 大谷地(おおやち)貝塚出土
縄文時代晩期 約2500年前
復元高30.5㎝ 土製品
資料番号:2005A8950

展示中 1-0

あまり知られていないことですが、北海道の歴史には弥生時代がありません。どういうことかと言うと、弥生時代というのは稲作を始めたことを目安に設定された時代区分なのですが、北海道は寒いので、米が収穫できるようになったのは明治時代以降だからです。そこで、本州の弥生時代にあたる時期を、北海道の歴史では続縄文時代と呼びます。続縄文時代は本州の古墳時代の終わりころまで続きました。その後も、本州の鎌倉時代頃までは擦文時代という、北海道独特の文化が育まれたのです。
しかし、北海道と本州の間で交流が行われていなかった訳ではありません。同じ参考館セレクションのなかの「遮光器土偶」をご覧下さい。青森県から出土したもので、東北地方北部を分布の中心とする「遮光器土偶」の代表的な例です。異様に大きな眼と流麗な曲線文様で埋め尽くされた体部が特徴で、中は空洞に作られています。
ここで紹介する土偶が出土した余市町は、積丹半島の東側の付け根に位置する町で、ウイスキーで有名です。東北地方の遮光器土偶と較べると眼はあまりに小さいのですが、体部には曲線文様があり、中は空洞です。脚部は復元ですが、高さが約30㎝という点も遮光器土偶と似ています。東北地方の遮光器土偶をまねて、北海道で作られた土偶です。
笑っているように見えますが、縄文時代に津軽海峡を越えた文化の交流があったことを示す、貴重な資料なのです。