特別展・企画展

天理大学創立90周年記念特別展 「ギリシア考古学の父 シュリーマン ―初公開!ティリンス遺跡原画の全貌―」


図版XII「ティリンス宮殿の壁画、牛の背で踊る男の図」

図版XII「ティリンス宮殿の壁画、牛の背で踊る男の図」 33.9cm×49.0cm

2015年、天理大学は創立90周年を迎えます。また本年は世界的に有名な考古学者、ハインリヒ・シュリーマンが来日して150年、ティリンス遺跡発掘報告書を発刊して130年にあたります。
これを機会に、天理大学附属天理参考館が所蔵するシュリーマンが発掘したティリンス遺跡(1884年-85年発掘)の報告書(1885年)の原画28枚を初公開いたします。
また、同じく附属施設である天理図書館からは、シュリーマンの名を世界に轟かせたトロイ発掘の報告書初版『トロイ遺跡』完本のドイツ語版とフランス語版を初公開するとともに、有名なナポレオン皇帝版『エジプト誌』やシーボルト『日本』など19世紀の調査報告書初版本も同時に出品します。
シュリーマンという人物に迫り、彼がなしとげた業績を伝えることが出来れば幸いです。

◆会期:2015(平成27)年4月15日(水)~6月8日(月)
◆会場:当館3階企画展示室1・2、3階常設展示オリエントコーナー
◆主催:天理大学、附属天理参考館、附属天理図書館
◆後援:外務省、ギリシャ大使館、大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館、奈良県、奈良県天理市、奈良県教育委員会、天理市教育委員会、毎日新聞社、NHK奈良放送局、ゲーテ・インスティトゥート・ヴィラ鴨川
◆特別協力:近畿日本鉄道株式会社
◆協力:日本ギリシャ協会、奈良日独協会、株式会社クマヒラ、シーシーエス株式会社、天理大学ふるさと会

こちらからチラシをご覧下さい。

【記者発表】ティリンス遺跡原画の初公開について(2014年11月26日)

 

関連イベント

予習講座「ギリシアの遺跡を見よう」

  日時:2015(平成27)年3月18日(水) 午後1時30分から
  講師:巽 善信(当館学芸員)
  会場:当館研修室
  受講料:入館料のみで受講できます
  定員:100名(当日先着順)


記念講演会「シュリーマンとギリシア先史考古学の誕生」

  日時:2015(平成27)年5月2日(土) 午後1時30分から
  講師:周藤 芳幸氏(名古屋大学教授)
  場所:当館研修室
  受講料:無料(入館料のみで受講できます)
  定員:100名(当日先着順)


記念講演会「トロイの木馬の東漸~仏教の中のギリシア図像」

  日時:2015(平成27)年5月30日(土) 午後1時30分から
  講師:芳賀 満氏(東北大学教授)
  場所:当館研修室
  受講料:無料(入館料のみで受講できます)
  定員:100名(当日先着順)


関連講演会「トロイ戦争図の東漸-祇園祭-」

  日時:2015(平成27)年6月8日(月) 午後2時から
  講師:巽 善信(当館学芸員)
  場所:当館研修室
  受講料:無料(入館料のみで受講できます)
  定員:100名(当日先着順)


トークサンコーカン(公開講演会) 「シュリーマンのティリンス遺跡原画を探る」

  日時:2015(平成27)年4月18日(土) 午後1時30分から
  講師:巽 善信(当館学芸員)
  塲所:当館研修室
  受講料:無料(入館料のみで受講できます)
  定員:100名(当日先着順)


ギャラリートーク(展示解説)

  月日:2015(平成27)年4月19日(日)、5月8日(金)、5月26日(火)、6月5日(金)
  時間:午後1時30分から
  場所:当館3階企画展示室、他


参考館メロディユー(ミュージアムコンサート) シリーズ第74回
「ハープの気軽なコンサート」

  日時:2015(平成27)年4月25日(土) 午後0時10分~0時50分
  出演:佐藤 雅(ハープ)
  場所:1階エントランスホール(入場無料)
  ◇共催:天理教音楽研究会 ※展示室をご覧になるには別途入館料が必要となります。


ワークショップ 紙芝居「僕はシュリーマン」、天理参考館謎解き脱出ゲーム

あなたたちは選ばれし勇者。魔王を倒すために参考館に来たのだが・・・。
突然、世界中から集められたたくさんの資料が意思を持ちだし、不思議な力で参考館を完全に制圧した!
各階は完全にロックアウトされてしまった。魔王が資料に不思議な力を与え、操っているのだ。
一時間以内に脱出しないと、あなたたちも魔王に支配され、魔界に連れ去られてしまう。
操られている資料たちは、君たちに謎と暗号を残した。各階にある展示品に隠された謎や暗号を解き明かせば、魔王を封印する呪文を手にすることができる。資料たちも助けを求めている。
見事魔王を封印し、参考館から脱出できるだろうか?


 シュリーマンを題材にした紙芝居と天理参考館展示室からの謎解き脱出ゲームを開催いたします。
ふるってご参加ください。


 ○対象:どなたでもご参加いただけます
 ○参加費:入館料のみ(大人400円、子供200円) ※申込不要
 ○会場:1階エントランスホール及び展示室内
 ○実施日:2015(平成27)年4月26日(日)、5月5日(火・祝)、5月24日(日)
 ○時間:午後1時30分~(紙芝居:約20分、謎解き脱出ゲーム:約1時間
 ○担当:巽学芸員、渡辺主事

 

ブログ 布留川のほとりから

・祇園祭 2015.6.4【シュリーマン展ブログ16】

・模型 2015.5.28【シュリーマン展ブログ15】

・金杯 2015.5.21【シュリーマン展ブログ14】

・図版ⅩⅥ「壺片」原画 2015.5.14【シュリーマン展ブログ13】

・筆跡鑑定 2015.5.7【シュリーマン展ブログ12】

・ドイツ国立博物館へ行く 2015.4.30【シュリーマン展ブログ11】

・解明への鍵-出会い- 2015.4.23【シュリーマン展ブログ10】

・トロイからティリンス 2015.4.16【シュリーマン展ブログ09】

・来日150周年(2) 2015.4.9【シュリーマン展ブログ08】

・来日150周年 2015.4.3【シュリーマン展ブログ07】

・苦労人 2015.3.26【シュリーマン展ブログ06】

・ホメロスの世界(4) 2015.3.19【シュリーマン展ブログ05】

・ホメロスの世界(3) 2015.3.12【シュリーマン展ブログ04】

・ホメロスの世界(2) 2015.3.5【シュリーマン展ブログ03】

・ホメロスの世界(1) 2015.2.26【シュリーマン展ブログ02】

・シュリーマン展に向けて 2015.2.19【シュリーマン展ブログ01】


関連動画

「天理参考館でシュリーマン展開催」 1分22秒(2015年4月15日)

「天理大学附属・天理参考館『ティリンス遺跡の原画 初公開』」 1分13秒(2014年11月26日)

 

■天理参考館この一品

第2回 「オリエント・閃緑岩製グデア像」 2分8秒

第11回 「オリエント・古代のガラス製品」 2分15秒

第21回 「オリエント・注口土器とリュトン」 2分22秒

第30回 「オリエント・ミイラ形彩画木棺」 2分32秒

■天理参考館のこころ

第4回 「シリーズ常設展 ―世界の考古美術1―」 9分56秒

第5回 「シリーズ常設展 ―世界の考古美術2―」 13分32秒

第10回 「かたちの遊びと祈り ―ユニークな土器―」 12分15秒

第22回 「ギリシアの古代美術 ―西洋3000年の煌めき―」 13分14秒

 


 

出品リスト

No. 資料名 年代 地域

1章 シュリーマンの魅せられた世界
1. 四耳脚台付壺 前3200-2900年 ギリシア・キュクラデス諸島
2. 把手付杯 LHⅠ期(前1550-1500年頃) ギリシア
3. 鳥文短剣 LHⅡ期(前1500-1400年頃) ギリシア
4. 鐙壺 LHⅢA2~LHⅢB(前1375-前1190年頃)
5. 牛像 LHⅢB期(前1300-前1190年) ギリシア
6. 幾何学文アンフォラ 前8世紀頃 ギリシア
7. コリントス式兜 前7-6世紀 ギリシア・コリントス
8. コリントス式アラバストロン 前7-6世紀 ギリシア・コリントス
9. コリントス式アリュバロス 前7-6世紀 ギリシア・コリントス
10. 黒像式ヒュドリア 前6世紀頃 ギリシア
11. 女神立像 前7-6世紀 ギリシア・ボイオティア地方
12. 彩文女神座像 前7-6世紀 ギリシア・ボイオティア地方
13. 女性立像 前6世紀後半 ギリシアまたはイタリア
14. 彩文騎馬人物像 前6世紀頃 ギリシア・ボイオティア地方
15. 彩文男性立像 前6世紀頃 ギリシア・ボイオティア地方
16. 人物像頭部片 前6世紀後半 イタリア
17. 赤像式オイノコエ 前330年頃 イタリア・カンパニア地方
18. 赤像式ベル形クラテル 前430年頃 イタリア・ルカニア地方
19. 赤像式オイノコエ 前350-340年頃 イタリア・カンパニア地方
20. 赤像式パテラ 前340-330年頃 イタリア・アプリア地方
21. 赤像式渦形クラテル 前4世紀頃 イタリア・アプリア地方
22. 赤像式アンフォラ 前4世紀頃 イタリア・カンパニア地方
23. 赤像式吊手付アンフォラ 前4世紀頃 イタリア・カンパニア地方
24. 女性座像 前4-3世紀頃 ギリシア・ボイオティア地方
25. 銀貨(ヘルメスと雄牛) 前4世紀後半 マケドニア
26. 銀貨(アレトゥーサと馬) 前5-4世紀 イタリア・シチリア島
27. 銀貨(アテナとペガサス) 前4世紀後半 ギリシア・コリントス
28. 銀貨(アテナと梟) 前4世紀頃 ギリシア・アテネ
29. 銀貨(アテナと梟) 前4世紀頃 ギリシア・アテネ
30. 手鏡 前3-2世紀 イタリア・トスカーナ
31. 大理石製トルソ 前3-後1世紀頃 ギリシア

2章 ティリンス遺跡と原画
32. 図版Ⅰ原画 1884-5年
33. 図版Ⅱ原画 1884-5年
34. 図版Ⅲ原画 1884-5年
35. 図版Ⅶ原画 1884-5年
36. 図版Ⅷ原画 1884-5年
37. 図版IX原画 1884-5年
38. 図版X原画 1884-5年
39. 図版XⅠ原画 1884-5年
40. 図版XⅡ原画 1884-5年
41. 図版XⅢ原画 1884-5年
42. 図版XⅥ原画 1884-5年
43. 図版XⅧ原画 1884-5年
44. 図版XIX原図 1884-5年
45. 図版XX原図 1884-5年
46. 図版XXⅠ原図 1884-5年
47. 図版XXⅡ原図 1884-5年
48. 図版XXⅢとXXⅣの原図 1884-5年
49. 図版図XXⅥ原図 1884-5年
50. 図版XXⅦ原図 1884-5年
51. 挿図126原図 1884-5年
52. 挿図127原図 1884-5年
53. 挿図128原図 1884-5年
54. 挿図139原図 1884-5年
55. 挿図142原図 1884-5年
56. 挿図156原図 1884-5年
57. 挿図159原図 1884-5年
58. 挿図165原図 1884-5年
59. 挿図167原図 1884-5年

3章 黎明期の考古学と報告書
60. ナポレオン皇帝版『エジプト誌』 1809-22年
61. レヤード『ニネヴェとその遺物』 1849年
62. シュリーマン『トロイ遺跡』 1874年(ドイツ語版)
63. シュリーマン『トロイ遺跡』 1874年(フランス語版)
64. シュリーマン『トロイ遺跡』 1875年(英語版)
※65. シュリーマン書簡 1874年3月14日付
※は資料保存のため実物展示は以下の期間のみとなります。
 4/15(水)・4/18(土)・5/9(土)・5/26(火)・6/6(土)
66. シュリーマン『ミュケナイ』 1878年(英語版)
67. シュリーマン『ティリンス』 1885年(ニューヨーク版)
68. シュリーマン『ティリンス』 1885年(フランス語版)
69. シュリーマン『ティリンス』 1886年(ドイツ語版)
70. シュリーマン『ティリンス』 1886年(ロンドン版)
71. デルプフェルト『トロイとイリオン』 1902年
72. シーボルト『日本』 1832-52年
73. オールコック『大君の都』 1863年
74. 黒頂壺 ナカダⅠ-Ⅱ期(前4000-3300年頃) エジプト
75. 船文双耳壺 ナカダⅡ期(前3800-3300年頃) エジプト
76. 男性被葬者像 古王国時代 エジプト
77. 枕 古王国~中王国時代 エジプト
78. 枕 新王国時代 エジプト
79. 供養碑 第18王朝(前1550-1295年頃) エジプト
80. マイアの供養碑断片 新王国時代 エジプト
81. カノプス壺 新王国時代 エジプト
82. 彩画人形木棺断片 新王国時代後期~第三中間期 エジプト
83. 精霊像 新王国時代 エジプト
84. 筆記用具 新王国時代 エジプト
85. ヌン碗 新王国時代(第18王朝) エジプト
86. ミイラ棺顔部分 第三中間期(第21王朝) エジプト・テーベ出土か
87. 人形彩画木棺 末期王朝 エジプト・アクミーム
88. ミイラ棺顔部分 末期王朝(第25王朝もしくは第26王朝) エジプト
89. 聖牛アピス文断片 末期王朝 エジプト
90. 墓壁断片浮彫 末期王朝 エジプト
91. 王頭像 末期王朝時代 エジプト
92. トキ像 末期王朝(第26王朝) エジプト
93. 鳥のミイラ 末期王朝時代 エジプト
94. オシリス神像 末期王朝 エジプト
95. スフィンクス プトレマイオス朝 エジプト
96. 授乳するイシス神像 プトレマイオス朝 エジプト
97. 蛇装飾壺 プトレマイオス朝 エジプト
98. ミイラ被いローマ時代 エジプト

 

ティリンス遺跡原画の初公開について

はじめに
当館はティリンス遺跡発掘報告書原画(未公開)を28枚所蔵している。ティリンスは世界的に有名な考古学者ハインリヒ・シュリーマン(Heinrich Schliemann)が1884年と1885年に発掘した遺跡である。検出遺構や出土遺物を正確に図面化し、1885年にはこの原画を使って発掘報告書を発刊している。原画なので、当然世界に1枚しかない。世界的にも貴重な原画を初公開する。

 

I ティリンス遺跡
ティリンスはギリシア、ペロポネソス半島のアルゴリコス湾の東岸にあるアクロポリス遺跡で、岩の丘の上に建造されている。周りの平野より約18m高い位置にある。厚い石壁がめぐる長さ約300m、幅60~100mの靴底形の丘で比較的高い南半部と低い北半部からなる。伝承ではティリンスはヘラクレスの生誕地ともされ、また巨石城壁は単眼の巨人キュクロプスが建てたことになっている。ホメロスは「城壁高きティリンス」と称している。1999年に世界遺産に登録。
シュリーマンは1884、1885年にデルプフェルト(Wilhelm Dorpfeld 1853-1940年)の協力を得て本格的な調査をしている。シュリーマンの発掘調査後、デルプフェルトが調査を継続している。それ以降もドイツの調査隊が中心となって現在まで継続して発掘されている。
ミケーネ時代(前1600-1050年頃)を通して栄えるが、シュリーマンらが発掘して明らかにしたのは、今日見ることのできる前13世紀後半の建築群である。上・下段のアクロポリスが強固な石壁で囲まれ、多くの建築物が並んでいた。

 

II ティリンス原画
シュリーマンらは発掘遺物や遺構を丁寧な図にして保存していた。まだ実測手法が確立していなかった当時を考えると、かなり正確な内容である。報告書を作成する段階で、原画を印刷所に持ち込み、石版や木版などで印刷された。報告書は1885年にはニューヨーク版とフランス語版で、1886年にはドイツ語版とロンドン版で発行している。現在の考古学者も見習わなければならないスピードである。
当館が所蔵するティリンス遺跡発掘報告書原画はPlate(図版)がI、II、III、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XVI、XVIII、XIX、XX、XXI、XXII、XXIII、XXIV(図版XXII、XXIVは原図ではXXIIIの1枚に収められている)、XXVI、XXVIIである。報告書のPlate数で言うと以上の20点で、原図枚数では19点と言うことになる。欠落はIV、V、VI、XIV、XV、XVII、XXVの7点である。ただし図版XVIIとXXVの2枚は現在、中近東文化センター附属博物館に保管されている。したがって所在不明なのは報告書Plate数で言えば、27点のうち5点のみとなる。ところでPlate27点のうち多色刷り石版印刷(CHROMOLITHOGRAPHY)は24点あるが、そのカラー原画は当館に18点ある。
報告書にはPlateの大きな図版以外に、通し番号の付いた小さな挿絵が約190点ある。当館には挿図の原画はNo.126,127,128,139,142,156,159,165,167の9点あるのみである。ほとんどは不明で、紛失している状態である。

 

III ティリンス原画の筆跡調査
2008年9月、天理大学のスタッフ6名がドイツに渡航し、ベルリンのシャーロッテンブルク宮殿にある先史・初期歴史博物館を訪ねた。同館館長代理(当時)ハンセル氏(A. Haensel)から同館文書部門の研究員でシュリーマン手記を専門とするユンカー氏(H. Junker)を紹介していただいた。ユンカー氏に当館が所蔵するティリンス原画を説明し、原画に描かれている文字の筆跡鑑定を依頼した。帰国後にユンカー氏から調査報告が送られてきた。ティリンス原画の28枚中11枚に書かれている文字は、シュリーマンによるものである可能性が非常に高いという内容であった。

 

シュリーマン直筆
1) Plate XII:下方右の鉛筆書き
2) Plate XIII:下方の鉛筆書き
3) Plate XVI:下方の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号
4) Plate XVIII:下方の鉛筆書き
5) Plate XIX:下方左右と上方右の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とその訂正した鉛筆書き
6) Plate XX:下方と上方右の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とそれを訂正した鉛筆書き
7) Plate XXI:下方と上方右の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とそれを訂正した鉛筆書き
8) Plate XXII:下方と上方右の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とそれを訂正した鉛筆書き
9) Plate XXIII:下方と上方右の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とそれを訂正した鉛筆書き
10) Plate XXVI:下方の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とそれを訂正した鉛筆書き
11) Plate XXVII:下方の鉛筆書き、絵に振ったインク書きの番号とそれを訂正した鉛筆書き

 

IV 何がわかったか
トロイ遺跡とミケーネ遺跡には発掘日誌が残っているが、ティリンス遺跡は発掘日誌が現存しない。そのなかで発掘現場で描き、メモしたこれら原画は第一次史料として重要であることは言うまでもない。
たとえば
図版I「要塞ティリンスの平面図」 25.2cm×39.8cm(図面のトリミング枠20cm×34.6cm)
1884年にデルプフェルトが作成した平面図。建築家でもあるデルプフェルトならではの正確さがある。考古学が産声を上げて間もない黎明期で、この図面は驚異的としか言いようがない。発掘後の1884年8月に、シュリーマンはポーランドで催されたドイツ人類学協会でティリンスの発掘報告を行っている。見事な図面は注目の的となった。鉛筆で下書きしてからインクで描いている。後から鉛筆部分は消されたようで、その痕が残っている。
図版XVI「壺片」44.8cm×30.0cm
近代的な考古学手法が未だ確立していなかったこの時期に、美術的価値の低い土器片に注目して図として残している点は評価されるべきであろう。
b・c「枝を持つ女性の列」:アルゴスの幾何学様式土器で、前8世紀頃に年代づけられる。原図ではbは中央部に位置しているが、報告書では左端に置き換えられている。原図左端の土器片と右上の破片が接続することが分かったので、配置を変えたと思われる。また類例から判断して、このような複数人数の女性列は左右と上にジグザグ文様帯で囲まれていることからも、報告書の位置の方が正しいと考えられる。1つの破片にも最後まで検証していたことをうかがわせ、シュリーマンらの出土遺物への誠実な取り組み方が分かる。

遺物や遺構に誠実に取り組むシュリーマンの姿が現れている。

 

V ティリンス遺跡と報告書原画
1884-85年にギリシアにあるティリンス遺跡を発掘し、その報告書を1885年に英語版(ニューヨーク)、フランス語版(パリ)、1886年に英語版(ロンドン)、ドイツ語版(ライプチヒ)と三カ国語で4版を出版している。発掘作業と並行して出土した遺物(特に壁画)はプロの絵師を呼んで描かせ、遺構はシュリーマンと協力して調査実施した考古学者デルプフェルトが精密に描いている。現在のような実測技術が確立されていない考古学黎明期では、最善の記録方法である。
こうした遺構図や遺物図は、報告書作成のときに印刷会社に原稿として渡し、石版画で印刷されることになる。その原画のほとんどが当館に所蔵されている。

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