特別展・企画展

スポット展示 「五月人形」


五月人形 大正11(1922)年 全高42.0㎝

五月人形 大正11(1922)年 全高42.0㎝

端午の節句にあわせて、京都の旧家伝来の五月人形をご紹介します。底冷えが厳しい京都では、春の訪れを告げる桃の節句は旧暦の三月三日にあたる四月三日にお祝いする風習があります。では端午の節句はどうかと言うと、こちらは普通に新暦の五月五日にお祝いするのが京都でも一般的です。旧暦となるとちょうど梅雨の時季にあたり、湿気で人形が傷んでしまいます。季節と共に美しく賢く暮らす京都の人々の知恵を感じずにはいられません。元々、端午の節句は流行病の多い時季に無病息災を願う行事として中国から伝わりました。
日本で比較的平穏な世が続いた江戸時代になると、厄を祓う意味合いよりも、男児の誕生を祝う節句へと変化していきます。この五月人形は「応神天皇と武内宿禰と従者」ですが、京都ではそんな長々しい言い方はせず、「大将さん」と敬意と親しみを込めて呼びます。江戸では荒々しい形相の「鍾馗」が好まれましたが、京都の「大将さん」は兜を着用せず、色白涼やかなお顔立ちです。しかしこの応神天皇は弓矢の神、武運長久を願う八幡神と考えられています。
下段には馬、虎、鳩が従います。いずれも精巧な毛づくり人形です。馬(神馬)は五月人形には付きものですが、虎は関西独特で“千里駆けて千里戻る”勇猛さが好まれます。鳩が異質な感じがしますが、鳩は八幡神のお使いです。また、鳩は食べ物を丸呑みするので、のどがつまらない験を担いだり、子どもの虫封じにも効くとして郷土玩具にも鳩笛はよく見かけられます。
戦闘の守護神ですが、穏やかな「大将さん」と、長寿の象徴の武内宿禰と、平和な鳩が組み合わされた温和な五月人形飾りです。

 

◆会期:2016(平成28)年4月6日(水)~5月9日(月)
◆会場:2階展示室 庶民のくらし-日本-コーナーの一部

 

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