ブログ布留川のほとりから

特別展「天理図書館 古典の至宝」、いよいよ三期へ!

2017年11月08日 (水)

特別展「天理図書館 古典の至宝―新善本叢書刊行記念―」がいよいよ三期を迎えます。三期は11月8日(水)から11月27日(月)まで。国宝『日本書紀』乾元本(下)、重要文化財『明月記』安貞元年8・9月、『源氏物語』池田本、奈良絵本、連歌、西鶴・芭蕉・蕪村の俳諧など、26点を展示いたします。

 

「奈良絵本に動物は出てきますか?」
二期開催中にお客様から質問を受けました。あわてて図録「天理図書館 古典の至宝」をめくりますと、鼠と人間との婚姻物語『鼠の草子絵巻』、白鼠の弥兵衛(やひょうえ)の出世物『やひやうゑねずみ』が目に飛び込んできました。生き生きと描かれた着物姿の鼠たちは三期で登場します。
「鼠が出てきますし…」と言いかけながら図録をめくりますと、キント雲のような雲に乗ったお猿さんたちが人の乗る輿を先導している絵をみつけました。
「猿もいます」。

 

このお猿さんたちが登場する『熊野の本地』は、熊野信仰説話です。
…天竺まかだ国の王には子どもがなかった。ある時、后の一人、五衰殿の女御(にょうご)が懐妊する。嫉妬したほかの后たちは配下に命じて五衰殿を殺させる。死の直前に生まれた王子は、山の獣や僧に育てられ、やがて王と会う。全ての経緯を知った王は、后たちの心の醜さを嫌い、王子らとともに国を離れ日本へ渡り、紀伊国音無川の辺に熊野三所権現として現れた…
天理図書館司書に伺いますと、「山の獣に育てられ・・・というところで猿の絵が出てきます」と答えてくださいました。その猿たちが輿に乗る王子を護りながら、日本に渡っている絵なのでしょうか。
なお、この本の文は、室町時代の武将、十市遠忠の筆であると、極札(きわめふだ=短冊形の札に記した鑑定書)に書かれています。

 

十市遠忠(とおち とおただ)と言えば、天理市柳本町にかつて大和で一番大きな城、龍王山城を築いた城主です。ただ今当館で実施中の「山の辺の道クイズ」でも取り上げている人物であり、当館にて掲示中の「天理の昔話」の一つ、「ジャンジャン火」伝説の主人公でもあります。
そして、この『熊野の本地』は、なんと豊臣秀頼の所蔵となり…当館で展示されることになります。
天理の龍王山、その城主であった十市遠忠とのご縁を感じます。

総務部 N 

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